クリニカルリサーチ領域

ワクチン開発の長い歴史と確かな技術を携えて、
終わりなき感染症との闘いに挑み続ける。

田中 宜之(クリニカルリサーチ領域長)
澤田 美由紀(クリニカルリサーチ領域 ワクチン領域 部長)

01
世界を感染症から守る
―ワクチン開発の歴史と功績―

MSDのワクチン開発を語る上で外せないのが、「現代のワクチンの父」と呼ばれるモーリス・ヒルマン博士です。米国本社の研究員として1950~1980年代におたふくかぜをはじめ数多くの病気に対する画期的なワクチンを開発し、人類を感染症から守ることに多大な貢献をした人物として知られています。その功績を受け継ぐ私たちは、その後も、ロタウイルスワクチンやヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンなど、世界各国で定期接種に使用されるようなワクチンを開発しています。最近は、エボラ出血熱のように、致死率が高く、世界的な拡大が懸念される感染症に対しても、外部の機関と協力しながらワクチン開発を進めています。

これらの貢献は、これまで積み上げてきた歴史と確かな技術を備えるMSDであるからこそできることであり、世界を感染症から守ろうと本気で取り組んできた証だと自負しています。MSDは長い歴史の中で、その時代の最先端の手法を用いて、それぞれの感染症に合った40種類以上もの多様なワクチンの開発を行ってきました。

常に私たちは、サイエンスに基づいたイノベーションを真摯に追求し、いまだ有効な治療・予防法が見つかっていない疾患領域のニーズに積極的に応えています。このサイエンスを重視し、患者さんを第一に考える企業姿勢こそが、私たちがこの会社に魅力を感じているところであり、革新的な薬を開発し続けられる底力になっているのではないかと思います。

02
ワクチン製造は“State of the art(最先端技術の結晶)”
―ワクチン開発の魅力と課題―

ワクチンには世界を救う力があるといっても過言ではないと思っています。実際にワクチンが有効性を示したときのインパクトは、本当に計り知れないものがあります。特に治療法のない感染症を予防できるワクチンは、人々の生命や公衆衛生にとって特別の意味を持ちます。ワクチン開発は非常にやりがいがある仕事であり、その影響力を知れば知るほど夢中になります。

さらに近年は、患者さんの少ない疾患を予防するワクチン開発が主流となり、臨床試験のハードルが高くなってきています。多くの人が感染するような一般的な感染症については、これまで開発されたワクチンによって抑えられ、ほとんどが過去のものとなりつつあります。そのため今は、より発症率は低いものの社会的に予防が必要とされる感染症を対象としたワクチンの開発が求められるようになってきているのです。その有効性と安全性を証明するためには、数万人といった規模の大きな臨床試験が必要となり、膨大な労力と時間がかかります。

こうした多くの挑戦が求められるワクチン開発は、MSDがサイエンス・イノベーションを人々にお届けするという揺らぎない覚悟を持っているからこそできる仕事であり、私たちに課された使命でもあると感じています。

03
がんを予防するワクチン
―HPVワクチンの開発―

子宮頸がんを予防するHPVワクチンは、がんを予防するという意味で画期的なワクチンです。しかし、「がん予防」を適応とするワクチンの開発は例がなく、開発当時は、あらゆることが手探りの状況でした。

例えば、臨床試験では、ワクチンの有効性を判定するために何らかの評価指標を用いますが、がんの発症そのもので効果を評価するとなると、治験者にがんの兆候が現われても治療せずに観察を続けることになってしまいます。それは倫理的に絶対に許されるものではありません。また、がんの発症には非常に長い時間がかかるため、開発期間も長くなってしまいます。そこで、がん発症の代替となる適切な評価指標を見出す必要がありました。関係者間でたくさんの議論を重ね、合意形成を図りながら開発を進めていく過程には大変な苦労がありましたが、ようやく世に送り出すことができたときは、開発者人生の中で最高の喜びと達成感がありました。

04
人類と感染症の終わりなき闘いに向けて
―今後の感染症に対する備え―

今後の感染症対策として、薬剤耐性(AMR)の出現にどのように備えるかという問題があります。感染症を引き起こす原因菌の多くには、既に効果のある抗菌薬が開発されていますが、いずれは、頻度は低くとも、どの抗菌薬も効かない耐性菌が必ずや現れるでしょう。MSDには抗菌薬開発に対する長い歴史と実績がありますが、新しい抗菌薬の需要が減少している現在では、一企業の努力だけで開発を継続するのは難しくなっています。しかし開発を中止してしまうと、いつかAMRによるパンデミックが起きたとき、人々の生命を守ることができません。そこで2020年に、世界の製薬会社の協働により、抗菌薬の開発を強化・加速するAMRアクションファンドが設立されました。MSDもグローバルで1億ドルを融資して、これらの活動を支えています。

人類が感染症と闘っていくために最も大切なことは、基礎となる技術を磨き、知識を積み重ね、いつ起こるかわからない次の感染症に向けて事前にしっかり準備しておくことだと思います。MSDはイノベーションの力でこれまで不可能だと考えられてきたことをひるがえし、可能にしてきました。私たちは、これからもサイエンス・イノベーションを追求して、多種多様なワクチンや医薬品を開発し、公衆衛生に貢献していきます。

OTHER INTERVIEWS

代表取締役上級副社長
グローバル研究開発本部長
白沢 博満

多様な人財が集まるMSD研究開発本部。その人財の総力を結集し、サイエンス・イノベーションへとつなげていくのが本部長の仕事です。「すべては、患者さんのために」という理念の下、研究開発トップのサイエンス・イノベーションにかける熱い想いや仕事の流儀をご紹介します。

詳細はこちら

オンコロジーサイエンスユニット統括
嶋本 隆司

長期の生命予後の延長や治癒には、なかなか結びつかなかったがん治療。そのがん治療に新たな時代をもたらした免疫チェックポイント阻害薬。その誕生にまつわるひたむきな努力や喜び、そして、開発の最前線を走るチームの今後のビジョンについてご紹介します。

詳細はこちら