性別を問わず当たり前にーMSDならではの育児休業のすすめ

社員の声がきっかけ、育休中の「ちょこっと勤務」とは

育休中の男性社員

11月19日は「いい育児」の日。仕事と子育ての両立を支援する育児休業制度は、女性の取得に加えて、最近では男性による取得も増えてきました。厚生労働省によれば、男性の育児休業取得率は2024年度に40.5%と初めて4割を超え、過去最高を記録しています。

それでも、いざ取得するにあたっては様々なハードルも聞こえてきます。今回の記事では、MSDにおける男性社員による育休取得の状況や、そもそも性別を問わず取得時に立ちはだかるハードルをどう解消しどう取得を促進しているのか、人事部門ディレクター 松岡 裕一郎に話を聞きました。

人事部門 松岡 裕一郎

-まず、MSDの男性社員による育休取得の状況を教えてください。

MSDの男性育休取得率は例年おおむね50~80%で、取得期間は社員によって異なりますが、直近の平均取得日数は60.6日(2024年度)です。年々長くなる傾向も見られ、最長で333日間取得した男性社員もいます。男性だから取りにくいという雰囲気はなく、社内では「女性社員はもちろん、男性社員の育休取得も当たり前」という認識が根付きつつあるように感じます。

取得した男性社員からは、育休取得が仕事に与えたポジティブな影響など、好意的な声が寄せられています(育休を2回取得した男性社員のインタビューはこちら)。

それでも女性社員による育休取得率100%に比べればまだ低いですし、取得期間についてもまだまだ短い。本当の意味で「当たり前」を作るには、まだ道半ばだと感じています。

取得のハードルはどんなところにあると考えていますか?また、取得を促進するためにどのような制度を設けていますか?

取得に際して社員から様々な意見を聞きますが、主に3つのハードルに集約されると考えています。これらは男性社員特有のものではなく、女性社員も同様に感じているでしょう。

  1. 金銭的な不安
  2. 長く仕事から離れることへの不安
  3. 取得することでの周囲への後ろめたさ

こうしたハードルを、社員一人ひとりの状況に合わせた制度設計で一つひとつ解消していくことが、性別に関わらず育休取得を促進する上でのポイントだと考えています。

MSDの育休支援制度

有給を取り入れている企業は多いですが、3カ月とはかなり長いですね。

もともとは5営業日でしたが、社員が新しい家族との時間を大切にできるように、最長3カ月(60営業日)に拡大しました。金銭的な不安を少しでも解消して、「最低でも3カ月は取ってほしい」という会社からの願いを込めています。

-「取得することの後ろめたさ」というハードルに対応する制度について詳しく教えてください。

GIG(社内副業制度)やINSPIRE(表彰制度)は、育休のための制度ではなく、社員の成長を促すためのキャリア開発制度ですが、育休取得の支援にも活用できると考えています。

GIGは、プロジェクトやタスクなど一時的な業務について参加者を社内公募で募集し、一定期間、通常業務と並行して従事してもらう「社内における副業募集」のような仕組みです。この枠組みのもと、育休を取得する社員の業務について希望者を募ることで、他部門・他チームの社員に新しいキャリア機会を提供することができます。受け入れ側にとっても、新しい視点を持つ社員を迎え入れることで、業務の見直しやプロセスの改善に繋げる良い機会になるでしょう。

また、INSPIREを活用して、育休を取得する社員の業務を代理で担う周囲のサポート社員たちを表彰し、報酬を提供するといったことも可能です。こうした制度があることで、取得する人の後ろめたさを少しでも軽減し、取得の後押しをできるのではと考えています。

「ちょこっと勤務」は珍しい制度ですね。ただ、育休中は育児に専念したほうがよいのでは?

この制度の立ち上げは、社員の声がきっかけでした。営業職のある男性社員が 「育児休業を取得したいが、顧客に迷惑がかかるのでは」と悩んでいたことを受け、本人の意思と上長の承認を条件に、休業中の一時的・臨時的勤務を試験的に開始したのがはじまりです。

また「ちょこっと勤務」は、職場復帰前の”慣らし業務”のような形で、少しずつでも業務との接触をつくる効果も期待できます。これによって多くの社員が抱く復職不安や両立不安を少しでも減らせるのでは、と正式にスタートしました。

もちろん育休は「育児に専念するための期間」。制度の利用はあくまでも任意で、完全に休業する社員がほとんどです。それでも「育休中も少し関わりたい」「長く完全に離れるのは不安」といった声を拾い上げ、制度化し、選択肢として提供するのは、多様性を尊重するインクルーシブな企業風土を持つMSDならではだと思います。

<ちょこっと勤務を利用した男性社員の声>

<ちょこっと勤務を利用した男性社員の声>

計60日を超える育休を3分割で取得しましたが、この間、重要なお客様対応をすべて同僚に任せることに心苦しさがありました。そこで「ちょこっと勤務」を活用し必要な範囲で関わることで、周囲に配慮しつつ業務と育児の両立ができ、結果的に安心して育児に取り組めました。育休後の業務への復帰もスムーズに進みました。

育休取得促進に向けて最後に一言お願いします。

育休取得によるキャリアへのマイナス影響はなく、むしろ育児を通じて人生の充実度が高まり、仕事に一層意欲的に取り組むことで、能力を最大限に発揮できると確信しています。社員には積極的に制度を活用し、自分の価値観にあった形で育休を取得してもらいたいです。

MSDは今後も育児と仕事を両立できる環境づくりを進め、社員一人ひとりが安心して育休を取得できる職場風土をさらに強化していきます。