経口低酸素誘導因子2アルファ(HIF-2α)阻害剤「ウェリレグ®錠40mg」新発売のお知らせ

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2025/08/18 15:00 JST

報道関係各位

MSD株式会社

MSD株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:プラシャント・ニカム、以下「MSD」)は、本日、「フォン・ヒッペル・リンドウ病関連腫瘍」および「がん化学療法後に増悪した根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」の治療薬として、経口低酸素誘導因子2アルファ(HIF-2α)阻害剤「ウェリレグ®錠40mg」(一般名:ベルズチファン、以下、ウェリレグ®)を発売したことをお知らせします。ウェリレグ®は、フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病に対する全身療法として初めての薬剤です。

ウェリレグ®は、経口投与可能な新しい作用機序の低分子HIF-2α阻害剤です。がん細胞においてVHL蛋白質の機能が喪失している状態において、HIF-2αとHIF-1βのヘテロ二量体形成を選択的に阻害します。その結果、血管新生・増殖および腫瘍代謝に関連する低酸素下で誘導される遺伝子の転写を阻害することで抗腫瘍効果を示します。

MSD代表取締役社長のプラシャント・ニカムは「本日、発売にいたった『ウェリレグ®』は、HIF-2α阻害剤という全く新しい作用機序の治療薬です。希少疾患であるVHL病における初めての全身療法であるとともに、PD-1またはPD-L1阻害剤といった免疫チェックポイント阻害剤や分子標的薬VEGFR-TKIによる治療後に進行した腎細胞がんに対する新しい治療選択肢です。特に、繰り返し腫瘍が発生するVHL病に対しては、これまで手術での腫瘍摘出や放射線照射といった患者さんの負担が大きな治療に限られていました。『ウェリレグ®』の発売により、新たな治療を待ち望んでいた患者さんに貢献できる選択肢を提供できることを大変嬉しく思います」と述べています。

フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病関連腫瘍への適応について

VHL病は、VHL遺伝子の変異によってHIF-2αが過剰発現し、腫瘍が発生する難治性の希少疾患で、日本の推定患者数は600~1,000人です*1。発生する主な腫瘍は、中枢神経系(小脳、延髄、脊髄)血管芽腫、網膜血管腫、腎細胞がん(RCC)、腎嚢胞、褐色細胞腫・パラガングリオーマ(PPGL)、膵神経内分泌腫瘍、膵嚢胞、精巣上体嚢胞腺腫、子宮広間膜嚢胞腺腫、内リンパ嚢腫瘍で、いずれも若年で発症し、複数の部位に同時に発生する(多発性)、生涯にわたって発症を繰り返す(再発性)という特徴があります*2-5。腫瘍の発生部位によって、多血症、高血圧、視力障害、運動障害、膀胱直腸障害、腎不全、不妊症などの合併症が現れることがあります。治療方法には腫瘍の摘出手術や放射線治療などがありますが、手術の侵襲に伴う障害が発生する場合や頻回の手術が必要になる場合があることなど患者さんの生活の質(QOL)への影響は大きく、新たな治療法が望まれていました*1,2

*1 国立研究開発法人 国立成育医療研究センター内 小児慢性特定疾病情報センター「フォンヒッペル・リンドウ(von Hippel-Lindau)病」
*2 フォン・ヒッペル・リンドウ病における実態調査・診療体制構築とQOL向上のための総合的研究班「フォン・ヒッペル・リンドウ病診療の手引き(2024年版)」
*3 Maher ER, Kaelin WG, Jr. von Hippel-Lindau disease. Medicine. 1997;76(6):381-3
*4 Lonser RR, Glenn GM, Walther M, et al. von Hippel-Lindau disease. Lancet. 2003;361 (9374):2059-2067.
*5 Maher ER, Neumann HP, Richard S. von Hippel-Lindau disease: a clinical and scientific review. Eur J Hum Genet. 2011;19(6):617-623.

腎細胞がんへの適応について

腎細胞がん(RCC)は腎臓がんのうち最も多くみられる種類のがんで、腎臓がんの約9割を占めています*6。2019年には約21,000人が新たに腎臓がん(腎盂がん除く)と診断され*7、男性は女性の約2倍の頻度で発症するとされています。RCCは初期では自覚症状がほとんどないため、小さいうちに発見できるのは健康診断や他の病気が疑われたために行う検査などで偶然発見されるものがほとんどです。がんが進行した場合、血尿や背中の痛み、腹部のしこりなどの症状が現れます*8。手術でがんを切除することが難しい場合は、薬物療法を行うこともあり、淡明細胞型のRCCでは主に免疫チェックポイント阻害剤(PD-1またはPD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤)や分子標的薬(VEGFR-TKI)を用います*9。しかしながら、それらによる治療後に進行した患者さんに対し、臨床試験で有効性、安全性が検証された治療方法が無かったことから、新たな治療選択肢が求められていました。ウェリレグ®はHIF-2αを阻害することによって、PD-1またはPD-L1阻害剤とVEGFR-TKIによる治療後に進行したRCCにおいても抗腫瘍効果を示す初めての薬剤となります。

*6 NCCN clinical practice guidelines in oncology: kidney cancer, version 1.2022; National Comprehensive Cancer Network (NCCN); 2021.
*7 国立がん研究センターがん情報サービス「腎臓がん(腎細胞がん)患者数(がん統計)」
*8 国立がん研究センターがん情報サービス「腎臓がん(腎細胞がん)について」
*9 日本泌尿器科学会 編. 腎癌診療ガイドライン2017年版. メディカルレビュー社, 2017. 2022年update.(2022年4月)

MSDは、腎細胞がんを含む重点分野と位置付けるがん領域で、今後も患者さんと医療従事者のニーズにお応えできるよう努めるとともに、VHL病患者さんとご家族に寄り添い、よりよい未来に貢献できるよう全力で取り組んでまいります。

以上


MSDについて

MSD(Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAが米国とカナダ以外の国と地域で事業を行う際に使用している名称)は、「最先端のサイエンスを駆使して、世界中の人々の生命を救い、生活を改善する」というパーパスのもとに結束し、130年以上にわたり、重要な医薬品やワクチンの開発を通して人類に希望をもたらしてきました。私たちは、世界トップクラスの研究開発型バイオ医薬品企業を目指し、人類や動物の疾患予防や治療に寄与する革新的なヘルスケア・ソリューションを提供するために、研究開発の最前線で活動しています。また、私たちは、多様かつ包括的な職場環境を醸成し、世界中の人々と地域社会に安全で持続可能かつ健康な未来をもたらすため、責任ある経営を日々行っています。MSDの詳細については、弊社ウェブサイト(www.msd.co.jp)やFacebookInstagramYouTubeをご参照ください。

<参考資料> 

<参考資料>1

<製剤写真>

<参考資料>2