アクチビンシグナル伝達阻害剤「エアウィン®」肺動脈性肺高血圧症(PAH)治療薬としての承認を取得
2025/06/24 15:01 JST
報道関係各位
MSD株式会社
MSD株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:カイル・タトル、以下「MSD」)は、本日、
アクチビンシグナル伝達阻害剤「エアウィン®(一般名:ソタテルセプト(遺伝子組換え))」について、肺動脈性肺高血圧症(Pulmonary arterial hypertension: PAH)の治療薬として製造販売承認を取得しましたのでお知らせいたします。エアウィン®は、PAHの肺血管リモデリングを標的とした新規作用メカニズムを持つ治療薬です。
肺高血圧症は、心臓から肺に血液を送る血管である肺動脈の血液の流れが悪くなることで、肺動脈の血圧が高くなる病気です。肺動脈の血圧が高くなると、心臓の右心室にも負担がかかり、やがて右心不全が進みます。肺高血圧症を治療せずに放置すると、数年以内に命を落としてしまうこともあります。PAHは
肺高血圧症の一種で、肺の細い血管が狭くなることにより発症します。PAHは厚生労働省の指定難病(難治性呼吸器疾患)であり、認定を受けた患者さんは4,682名(2023年度)と年々増加しています*1。近年、PAHは治療薬の開発が進み、既存薬の併用療法によって治療成績は改善していますが、PAHの予後にはいまだに課題が残っており、さらなる治療選択肢が求められています。
*1: 難病情報センターホームページ(2025年6月現在)から引用
エアウィン®は、アクチビンシグナル伝達阻害剤として初めて承認されたPAHの治療薬です。PAHの本態である肺血管リモデリングを標的とするエアウィン®は、主にアクチビンAと結合し細胞増殖を促進するアクチビンシグナル伝達を阻害することで、シグナル伝達のバランスを改善し、肺血管平滑筋細胞の増殖を抑制し血行動態を改善します。非臨床モデルでは、これらの細胞に対する作用により、血管壁厚の減少、右室のリモデリングの減少、並びに血行動態の改善が認められました。2024年3月に米国食品医薬品局(FDA)からPAHの成人患者さんに対する治療薬として、同年8月には欧州委員会(EC)からPAHの成人患者さん(WHO機能分類クラスIIおよびIII)に対する治療薬として、それぞれ承認を取得しました。
MSD代表取締役上級副社長執行役員 グローバル研究開発本部長の白沢 博満は、「PAHは依然として予後が不良な進行性の疾患です。エアウィン®というPAHの本態を標的とする新規作用メカニズムの革新的な治療選択肢の提供を通じて、日本のPAH患者さんに貢献できることを大変嬉しく思います」と述べています。
MSDは、肺高血圧症患者さんとご家族に寄り添い、よりよい未来に貢献できるよう、肺高血圧症治療薬の開発および提供に引き続き全力で取り組んでまいります。
承認の根拠となった臨床試験について
今回の製造販売承認は、標準的なバックグラウンド療法を受けているPAHの成人患者(WHO機能分類クラスIIおよびIII)を対象とした、海外で実施された第3相試験(STELLAR試験)および国内第3相試験(020試験)等の結果に基づいています。
プラセボ対照二重盲検比較試験であるSTELLAR試験では、323例を対象に本剤(初回に0.3 mg/kgを投与、2回目以降は0.7 mg/kgに増量)またはプラセボを、他のPAH治療薬に上乗せして3週間ごとに皮下投与しました。主要評価項目である24週時の6分間歩行距離(6MWD)のベースラインからの変化量はプラセボ群と比較して本剤の方が40.8 m(中央値)長く、運動耐容能を有意に改善しました(95%信頼区間:27.5~54.1; p<0.001)。全試験期間において、副作用は本剤を投与した163例中83例(50.9%)に認められました。主な副作用は、毛細血管拡張症25例(15.3%)、頭痛17例(10.4%)、鼻出血15例(9.2%)、注射部位疼痛10例(6.1%)及びヘモグロビン増加9例(5.5%)でした。
非対照非盲検試験である020試験では、日本人のPAH患者46例を対象に本剤(初回に0.3 mg/kgを投与、2回目以降は0.7 mg/kgに増量)を、他のPAH治療薬に上乗せして3週間ごとに皮下投与しました。主要評価項目である24週時の肺血管抵抗のベースラインからの変化量の推定値は-99.2 dynes・sec/cm5(95%信頼区間:-129.6~-68.4)であり、血行動態の改善を示しました。主要有効性解析時までに、副作用は本剤を投与した46例中29例(63.0%)に認められました。主な副作用は、ヘモグロビン増加10例(21.7%)、鼻出血9例(19.6%)、頭痛7例(15.2%)及び毛細血管拡張症3例(6.5%)でした。
以上
MSDについて
MSD(Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAが米国とカナダ以外の国と地域で事業を行う際に使用している名称)は、「最先端のサイエンスを駆使して、世界中の人々の生命を救い、生活を改善する」というパーパスのもとに結束し、130年以上にわたり、重要な医薬品やワクチンの開発を通して人類に希望をもたらしてきました。私たちは、世界トップクラスの研究開発型バイオ医薬品企業を目指し、人類や動物の疾患予防や治療に寄与する革新的なヘルスケア・ソリューションを提供するために、研究開発の最前線で活動しています。また、私たちは、多様かつ包括的な職場環境を醸成し、世界中の人々と地域社会に安全で持続可能かつ健康な未来をもたらすため、責任ある経営を日々行っています。MSDの詳細については、弊社ウェブサイト(www.msd.co.jp)やFacebook、Instagram、YouTubeをご参照ください。