抗PD-1抗体/抗悪性腫瘍剤「キイトルーダ®」 再発又は難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の単剤療法について承認を取得 および 1レジメン以上の化学療法歴を有する再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫患者を対象とした単剤療法の新たな臨床成績を添付文書に追加

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2023/06/26 15:00 Asia/Tokyo

報道関係各位

MSD株式会社

MSD株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:カイル・タトル、以下 「MSD」)は、本日、抗PD-1抗体「キイトルーダ®(一般名:ペムブロリズマブ(遺伝子組換え))」について、再発又は難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の適応を追加する国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得しました。また、添付文書の「17.臨床成績」の項に、古典的ホジキンリンパ腫に関する国際共同第3相試験(KEYNOTE-204試験)の新たな臨床成績を追加しましたのでお知らせいたします。

 

再発又は難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫に対する適応拡大について

悪性リンパ腫は、白血球の一種であるリンパ球ががん化する血液のがんです。原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)は悪性リンパ腫の一種で、リンパ球のなかでも胸腺B細胞ががん化したもので、希少で進行が速い疾患です。悪性リンパ腫は、組織学的にホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に大別されますが、約90%以上が非ホジキンリンパ腫で、海外ではPMBCLが非ホジキンリンパ腫の2~4%を占めていることが知られています*1,2。多くの場合、若年成人に発症し、診断時の年齢の中央値は35歳です*1。海外のデータでは、化学療法による一次治療で治癒しないPMBCL患者さんの割合は10~20%で*3-6、一次治療後の再発または難治性の患者さんには自家造血幹細胞移植が有効である場合がありますが、総じて予後は不良であり*7、新たな治療の選択肢が望まれていました。

今回の承認は、海外第2相試験であるKEYNOTE-170試験および国内第1相試験であるKEYNOTE-A33試験の良好な結果に基づいています。

KEYNOTE-170試験では、再発または難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫患者注)153例を対象に、本剤200 mg 3週間間隔投与の有効性および安全性が検討されました。主要評価項目である奏効率[改訂IWG criteria(2007)に基づく中央判定による完全奏効(CR)または部分奏効(PR)]は、45.3%でした。安全性解析対象例53例中30例(56.6%)に副作用が認められ、主な副作用(10%以上)は、好中球減少症10例(18.9%)でした。

KEYNOTE-A33試験では、再発または難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫患者注)27例を対象に、本剤200 mg 3週間間隔投与の有効性および安全性が検討されました。主要評価項目である奏効率[改訂IWG criteria(2007)に基づく中央判定による完全奏効(CR)または部分奏効(PR)]は、42.9%でした。安全性解析対象例7例中5例(71.4%)に副作用が認められ、副作用(10%以上、本試験においては全副作用)は、ALT増加、AST増加、好中球減少症および発熱が各2例(28.6%)、咳嗽、紅斑、発熱性好中球減少症および頭痛が各1例(14.3%)でした。

なお、キイトルーダは本適応で、希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を受けています。

注)1,2自家造血幹細胞移植後に再発が認められた、または自家造血幹細胞移植後60日以内にCRまたはPRが得られなかった患者、あるいは自家造血幹細胞移植に不適格である場合、2種類以上の前治療を受け、無効または直近の治療後に再発した患者が組み入れられた。

 

「17.臨床成績」の項への国際共同第3相試験(KEYNOTE-204試験)の追加について

悪性リンパ腫の一種であるホジキンリンパ腫は、日本では、悪性リンパ腫全体の約5%を占めています*8。また、ホジキンリンパ腫は、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)と結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫の2つに分けられ、日本でもcHLがほとんどを占めています。キイトルーダは、2017年に、再発又は難治性のcHLの適応を取得しています。

今回、添付文書に追加された第3相KEYNOTE-204試験は、キイトルーダのcHLにおける現在の適応に関する検証的試験であり、1レジメン以上の化学療法歴を有する再発または難治性の古典的ホジキンリンパ腫患者304例(日本人16例を含む)を対象に、本剤200 mg 3週間間隔投与の有効性および安全性を、ブレンツキシマブ ベドチン1.8 mg/kg 3週間間隔投与を対照として検討しました。主要評価項目は、自家造血幹細胞移植後又は同種造血幹細胞移植後の臨床データおよび画像データを含む無増悪生存期間(PFS)ならびに全生存期間(OS)とされ、中間解析(2020年1月16日データカットオフ)において、本剤はブレンツキシマブ ベドチンと比較して、PFS を有意に延長しました(HR=0.65 [95% CI, 0.48-0.88]; p=0.0027)。安全性解析対象例148例中110例(74.3%)(日本人9例中8例を含む)に副作用が認められました。主な副作用(10%以上)は、甲状腺機能低下症23例(15.5%)、発熱19例(12.8%)、そう痒症16例(10.8%)でした。

MSDは、今後も重点分野と位置付けるがん領域で、これまで以上に患者さんと医療従事者のニーズに応えていきたいと考えています。

 

キイトルーダ®について

キイトルーダ®は、PD-1に対するヒト化モノクローナル抗体であり、活性化T細胞上のPD-1に結合することにより、がん細胞上のPD-L1及びPD-L2との結合を阻害することで、がん細胞による活性化T細胞の抑制を阻害します。その結果、抑制されていたT細胞が再度がん抗原を認識した際に、再活性化され、がん細胞を排除できるようになります。

キイトルーダ®は、2017年2月15日に国内で販売を開始しました。これまでに「悪性黒色腫」「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」「再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫」「がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌」「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)注3)」「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」「腎細胞癌における術後補助療法」「再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌」「根治切除不能な進行・再発の食道癌」「治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌」「PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」「ホルモン受容体陰性かつHER2陰性で再発高リスクの乳癌における術前・術後薬物療法」「がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の子宮体癌」「がん化学療法後に増悪した高い腫瘍遺伝子変異量(TMB-High)を有する進行・再発の固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」「進行又は再発の子宮頸癌」の効能又は効果について承認を取得しています。また、HER2陰性の胃腺がんまたは食道胃接合部腺がんに対する化学療法との併用療法についておよび、進行または切除不能な胆道がんに対する化学療法との併用療法について申請中で、前立腺がん、肝細胞がん、卵巣がんなどを対象とした後期臨床試験が進行中です。

注3) 条件付き早期承認対象

*1 National Cancer Institute Surveillance, Epidemiology, and End Results Program: Primary mediastinal (thymic) large B-cell lymphoma

*2 一般社団法人 日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版補訂版

*3   Zinzani PL , Stefoni V , Finolezzi E , et al : Rituximab combined with MACOP-B or VACOP-B and radiation therapy in primary mediastinal large B-cell lymphoma: A retrospective study . Clin Lymphoma Myeloma 9 : 381 – 385 , 2009

*Rieger M , Osterborg A , Pettengell R , et al : Primary mediastinal B-cell lymphoma treated with CHOP-like chemotherapy with or without rituximab: Results of the Mabthera International Trial Group study . Ann Oncol 22 : 664 – 670 , 2011

*5  Giulino-Roth L , O’Donohue T , Chen Z , et al : Outcomes of adults and children with primary mediastinal B-cell lymphoma treated with dose-adjusted EPOCH-R . Br J Haematol 179 : 739 – 747 , 2017

*6  Dunleavy K , Pittaluga S , Maeda LS , et al : Dose-adjusted EPOCH-rituximab therapy in primary mediastinal B-cell lymphoma . N Engl J Med 368 : 1408 – 1416 , 2013

*7  Kuruvilla J , Pintilie M , Tsang R , et al : Salvage chemotherapy and autologous stem cell transplantation are inferior for relapsed or refractory primary mediastinal large B-cell lymphoma compared with diffuse large B-cell lymphoma . Leuk Lymphoma 49 : 1329 – 1336 , 2008

*8  国立がん研究センターがん情報サービス ホジキンリンパ腫

 

以上

 

MSDについて

MSD(Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA.が米国とカナダ以外の国と地域で事業を行う際に使用している名称)は、最先端のサイエンスを駆使して、世界中の人々の生命を救い、生活を改善するというパーパスのもとに結束しています。130年以上にわたり、重要な医薬品やワクチンの発見を通して人類に希望をもたらしてきました。私たちは、世界トップクラスの研究開発型バイオ医薬品企業を目指し、人類や動物の疾患予防や治療に寄与する革新的なヘルスケア・ソリューションを提供するために、研究開発の最前線で活動しています。私たちは、多様かつ包括的な職場環境を醸成し、世界中の人々と地域社会に、安全で持続可能かつ健康な未来をもたらすため、責任ある経営を日々続けています。MSDの詳細については、弊社ウェブサイト(www.msd.co.jp)やFacebookTwitterYouTubeをご参照ください。

 

参考資料

抗悪性腫瘍剤「キイトルーダ®