抗PD-1抗体/抗悪性腫瘍剤「キイトルーダ®」 新たな二つの適応を取得 -進行又は再発の子宮頸癌- -ホルモン受容体陰性かつHER2陰性で再発高リスクの乳癌における術前・術後薬物療法- また、新たな臨床成績の追加に関する添付文書の改訂 -完全切除後のステージⅡB又はⅡCの悪性黒色腫患者を対象とした術後補助療法-

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2022/09/26 00:00 Asia/Tokyo

報道関係各位

MSD株式会社

MSD株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:カイル・タトル、以下 「MSD」)は、本日、抗PD-1抗体「キイトルーダ®(一般名:ペムブロリズマブ(遺伝子組換え))」について、以下に関する国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得しました。また以下の添付文書の改訂を行いましたのでお知らせいたします。

国内製造販売承認事項一部変更の承認:

- 進行又は再発の子宮頸癌

- ホルモン受容体陰性かつHER2 陰性で再発高リスクの乳癌における術前・術後薬物療法

添付文書改訂:

- 「17.臨床成績」の項に国際共同第3相試験(KEYNOTE-716試験)の追加

 

進行又は再発の子宮頸癌に対する適応拡大について

子宮頸がんは子宮下部にある子宮頸部の粘膜の細胞に発生するがんで、おもにHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が原因です。異性との性経験のある女性の84.6%が一生に一度はHPVに感染すると推計されています*1。世界では、年間約60万人の女性が子宮頸がんに罹患し、約34万人が子宮頸がんによって死亡しています*2。日本では毎年10,000人以上の女性が子宮頸がんと診断され、年間約2,900人が亡くなっています*3。子宮頸がんは20~40歳代の女性に多いがんです*3

今回の承認は、根治的治療の適応がなく、化学療法歴のない(化学放射線療法としての投与歴は除く)進行又は再発の子宮頸癌患者617例(日本人57例を含む)を対象とし、キイトルーダ®と他の抗悪性腫瘍剤(パクリタキセル及びプラチナ製剤±ベバシズマブ)との併用療法注1)の有効性及び安全性を、プラセボと他の抗悪性腫瘍剤との併用療法注2)を対照として評価した国際共同第3相試験KEYNOTE-826試験のデータに基づいています。同試験において、キイトルーダ®と他の抗悪性腫瘍剤との併用療法はプラセボと他の抗悪性腫瘍剤との併用療法と比較して主要評価項目の全生存期間(OS)及び無増悪生存期間(PFS) を有意に延長しました(OS: HR=0.67 [95% CI, 0.54-0.84, P= 0.0003]、PFS: HR=0.65 [95% CI, 0.53-0.79, P < 0.0001])。安全性については、安全性解析対象例307例中298例(97.1%)(日本人35例中35例を含む)に副作用が認められました。主な副作用(20%以上)は、脱毛症171例(55.7%)、貧血149例(48.5%)、悪心104例(33.9%)、下痢76例(24.8%)、末梢性ニューロパチー75例(24.4%)、疲労70例(22.8%)、末梢性感覚ニューロパチー69例(22.5%)、好中球減少症68例(22.1%)及び嘔吐63例(20.5%)でした。

注1) キイトルーダ®200 mg 3週間間隔投与(Q3W)(各コースの1日目に投与)と以下の抗悪性腫瘍剤(治験担当医師が患者ごとに選択)のいずれかを併用した。

・ パクリタキセル175 mg/m2及びプラチナ製剤(シスプラチン50 mg/m2又はカルボプラチンAUC 5 mg·min/mL相当量)の順にQ3W(各コースの1日目に投与、シスプラチンは各コースの1日目又は2日目に投与)で投与。

・ パクリタキセル175 mg/m2、プラチナ製剤(シスプラチン50 mg/m2又はカルボプラチンAUC 5 mg·min/mL相当量)及びベバシズマブ15 mg/kg の順にQ3W(各コースの1日目に投与、シスプラチンは各コースの1日目又は2日目に投与)で投与。

注2) プラセボQ3W(各コースの1日目に投与)と注1)と同一の抗悪性腫瘍剤(治験担当医師が患者ごとに選択)のいずれかを併用した。

 

ホルモン受容体陰性かつHER2陰性で再発高リスクの乳癌における術前・術後薬物療法に対する適応拡大について

乳がんは、日本では、1年間に約94,500人(女性: 93,900人、男性700人)が診断され、年間約14,700人の女性が亡くなっていると推定されます*4。女性のがんの中で乳がんは最も多く、特に40歳代後半〜60歳代後半の罹患率が高い傾向があります*4。乳がんは、主にホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)受容体、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、がん細胞の増殖能(Ki67)という3つの要素を調べることにより5つのサブタイプに分類されています*5。その一つにトリプルネガティブ乳がん(TNBC)があり、ホルモン受容体の発現やHER2過剰発現を伴わないサブタイプです。TNBCは、乳がん全体の約10-15%を占め、40歳未満の女性に多く、他のタイプの乳がんに比べ一般に増殖能が高く生存期間も短いといわれています。

これまでのTNBCにおける効能又は効果は「PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」のみでしたが、今回の承認によって「ホルモン受容体陰性かつHER2陰性で再発高リスクの乳癌における術前・術後薬物療法」が追加となりました。これにより高リスクの早期TNBCに対する術前化学療法との併用療法とそれに続く術後のキイトルーダ®単独療法としての治療が可能となりました。今回の承認は、ホルモン受容体陰性かつHER2陰性で再発高リスク注3)の周術期の乳癌患者1,174例(日本人76例を含む)を対象とし、術前薬物療法としてのキイトルーダ®と化学療法との併用療法、及び術後薬物療法としてのキイトルーダ®単独療法注4)の有効性及び安全性を、術前薬物療法としてのプラセボと化学療法との併用療法、及び術後薬物療法としてのプラセボ投与注5)を対照として評価した国際共同第3相試験(KEYNOTE-522試験)の結果に基づいています。本試験において、術前のキイトルーダ®と化学療法との併用療法及び術後のキイトルーダ®単独投与は、術前のプラセボと化学療法との併用療法及び術後のプラセボ投与と比較して主要評価項目の一つである無イベント生存期間(EFS)を有意に延長しましたHR=0.63 [95% CI, 0.48-0.82]; p=0.00031)。安全性については、安全性解析対象例783例中774例(98.9%)(日本人45例中45例を含む)に副作用が認められました。主な副作用(20%以上)は、悪心495例(63.2%)、脱毛症471例(60.2%)、貧血429例(54.8%)、好中球減少症367例(46.9%)、疲労330例(42.1%)、下痢238例(30.4%)、ALT増加204例(26.1%)、嘔吐200例(25.5%)、無力症198例(25.3%)、発疹196例(25.0%)、便秘188例(24.0%)、好中球数減少185例(23.6%)、AST増加157例(20.1%)でした。

注3)  術前薬物療法を開始する前に、画像診断又は臨床診断によりTNM 分類でT1c かつN1~2、又はT2~4かつN0~2に該当する遠隔転移を有しない患者が対象とされた。なお、TNM 分類について、治験実施計画書第1版ではAmerican Joint Committee on Cancer(AJCC)第7版が、治験実施計画書改訂第2版以降はAJCC 第8版が用いられた。

注4)  術前薬物療法としてキイトルーダ®200 mg 3週間間隔投与(Q3W)(各コースの1日目に投与)と以下の化学療法を併用し、術後薬物療法としてキイトルーダ®200 mg Q3W(各コースの1日目に投与)を9コース投与した[パクリタキセル80 mg/m2 1週間間隔投与(QW)(1コース21日間、各コースの1、8、15日目に投与)及びカルボプラチンAUC 5 mg·min/mL 相当量Q3W(1コース21日間、各コースの1日目に投与)又はAUC 1.5 mg·min/mL 相当量QW(1コース21日間、各コースの1、8、15日目に投与)を4コース、その後ドキソルビシン塩酸塩60 mg/m2Q3W 又はエピルビシン塩酸塩90 mg/m2 Q3W(1コース21日間、各コースの1日目に投与)及びシクロホスファミド(無水物換算)600 mg/m2 Q3W(1コース21日間、各コースの1日目に投与)を4コース投与。ドキソルビシン又はエピルビシンは、治験担当医師が患者ごとに選択した]。

注5)  術前薬物療法としてプラセボQ3W(各コースの1日目に投与)と注4)と同一の化学療法を併用し、術後薬物療法としてプラセボQ3W(各コースの1日目に投与)を9コース投与した。

 

「17.臨床成績」の項への国際共同第3相試験(KEYNOTE-716試験)の追加について

悪性黒色腫は皮膚がんのうち最も深刻なもので、色素産生細胞の増殖が制御困難になるのが特徴です。日本国内では約5,000人が罹患し*6、年間約650人が死亡している*7と報告されています。悪性黒色腫は、主に腫瘍の厚さと表面の潰瘍、がんがリンパ節あるいは他の部位や内臓に転移しているかどうかに基づいて、Ⅰ~Ⅳ期(ステージ)に分類されています。

これまで、「最適使用推進ガイドライン*8 ペムブロリズマブ(遺伝子組換え) (販売名:キイトルーダ点滴静注100 mg)~悪性黒色腫~」(以下、「最適使用ガイドライン」)の「投与対象となる患者」において悪性黒色腫の術後補助療法における適応患者の選択は、完全切除後のステージⅢ注6の悪性黒色腫患者における術後補助療法とされていましたが、今回の添付文書の改訂に伴い最適使用ガイドラインも改訂され、完全切除後のステージⅡB又はⅡCの悪性黒色腫患者も投与対象となる患者の選択に含まれ、新たに、完全切除後のステージⅡB、ⅡC注7)又はⅢ注6)の悪性黒色腫患者における術後補助療法となりました。

今回の添付文書に追加された臨床成績は、完全切除後のステージⅡB又はⅡCの悪性黒色腫患者(日本人3例を含む)を対象に、術後補助療法としてキイトルーダ®200mg 3週間間隔投与の有効性及び安全性をプラセボを対照として評価した国際共同第3相試験(KEYNOTE-716試験)の解析結果です。1回目の中間解析(2020年12月4日データカットオフ)において、全患者集団で、本剤はプラセボと比較して、主要評価項目である無再発生存期間(RFS)を有意に延長しました(HR=0.65 [95% CI, 0.46-0.92]; p=0.00658)。安全性については、安全性解析対象例483例中400例(82.8%)(日本人2例中2例を含む)に副作用が認められました。主な副作用(10%以上)は、そう痒症117例(24.2%)、疲労102例(21.1%)、下痢90例(18.6%)、関節痛78例(16.1%)、発疹76例(15.7%)及び甲状腺機能低下症75例(15.5%)でした(2回目の中間解析、2021年6月21日データカットオフ)。

注6) AJCC (American Joint Committee on Cancer)病期分類(第 7版)に基づく評価、ステージⅢAでは リンパ節内の転移巣が1 mm超の場合のみ

注7) AJCC(American Joint Committee on Cancer)病期分類(第8版)に基づく評価

 

キイトルーダ®について

キイトルーダ®は、PD-1に対するヒト化モノクローナル抗体であり、活性化T細胞上のPD-1に結合することにより、がん細胞上のPD-L1及びPD-L2との結合を阻害することで、がん細胞による活性化T細胞の抑制を阻害します。その結果、抑制されていたT細胞が再度がん抗原を認識した際に、再活性化され、がん細胞を排除できるようになります。

キイトルーダ®は、2017年2月15日に国内で販売を開始しました。これまでに「悪性黒色腫」「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」「再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫」「がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌」「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)注)」「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」「腎細胞癌における術後補助療法」「再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌」「根治切除不能な進行・再発の食道癌」「治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌」「PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」「がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の子宮体癌」「がん化学療法後に増悪した高い腫瘍遺伝子変異量(TMB-High)を有する進行・再発の固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」の効能又は効果について承認を取得しています。また、前立腺がん、胃がん、肝細胞がんなどを対象とした後期臨床試験が進行中です。

注) 条件付き早期承認対象

MSDは、重点分野と位置付けるがん領域で患者さんと医療従事者のニーズに応えていけるよう、革新的な医薬品の開発を進め、承認取得に向けて取り組んでいきます。

*1 Chesson HW, et al. Sex Transm Dis. 2014; 41(11) :660-4.

*2 WHO IARC_Cervical cancer 
  https://www.iarc.who.int/cancer-type/cervical-cancer/

*国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」 がん種別統計情報 子宮頸部
 https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/17_cervix_uteri.html

*4 国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」 がん種別統計情報 乳房
 https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/14_breast.html#anchor1

*5 Goldhirsch A, et al: Ann Oncol 24: 2206-2223, 2013

*厚生労働省 平成29年(2017年)患者調査の概要

*7 「がんの統計’19」 公益財団法人がん研究振興財団

*8 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 最適使用推進ガイドライン(医薬品)より

 

以上

 

MSDについて

MSD(Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA.が米国とカナダ以外の国と地域で事業を行う際に使用している名称)は、最先端のサイエンスを駆使して、世界中の人々の生命を救い、生活を改善するというパーパスのもとに結束しています。130年以上にわたり、重要な医薬品やワクチンの発見を通して人類に希望をもたらしてきました。私たちは、世界トップクラスの研究開発型バイオ医薬品企業を目指し、人類や動物の疾患予防や治療に寄与する革新的なヘルスケア・ソリューションを提供するために、研究開発の最前線で活動しています。私たちは、多様かつ包括的な職場環境を醸成し、世界中の人々と地域社会に、安全で持続可能かつ健康な未来をもたらすため、責任ある経営を日々続けています。MSDの詳細については、弊社ウェブサイト(www.msd.co.jp)や Facebook 、 Twitter 、 YouTubeをご参照ください。

参考資料

抗悪性腫瘍剤「キイトルーダ®」