抗PD-1抗体/抗悪性腫瘍剤「キイトルーダ®」新たな二つの適応を取得 がん化学療法後に増悪した高い腫瘍遺伝子変異量(TMB-High)を有する進行・再発の固形癌 根治切除不能又は転移性の腎細胞癌に対する「レンビマ®」との併用療法

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2022/02/25 00:01 Asia/Tokyo

報道関係各位

MSD株式会社

MSD株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:カイル・タトル、以下 「MSD」)は、本日、抗PD-1抗体「キイトルーダ®(一般名:ペムブロリズマブ(遺伝子組換え))」について、以下に関する国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得しましたのでお知らせいたします。

  • がん化学療法後に増悪した高い腫瘍遺伝子変異量(TMB-High)を有する進行・再発の固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)
  • 根治切除不能又は転移性の腎細胞癌に対する「レンビマ®」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)との併用療法

 

がん化学療法後に増悪した高い腫瘍遺伝子変異量(TMB-High)を有する進行・再発の固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)に対する適応拡大について

腫瘍遺伝子変異量(Tumor Mutation Burden; TMB)とは、腫瘍細胞に生じた遺伝子変異量で、ゲノムコーディング領域百万塩基当たりの体細胞遺伝子変異数(mut/Mb)として示されます。本適応では、10 mut/Mb以上である状態をTMB-Highと定義しています。TMB-Highの腫瘍では、ネオアンチゲンがより多く誘導され、免疫チェックポイント阻害剤に対して良好に反応する可能性があるとされています。TMB-Highの腫瘍は、悪性黒色腫や非小細胞肺がん、大腸がん、子宮内膜がん、膀胱がん、胃がんなどで比較的多く見られると報告されています*1。臓器別ではなく、がん種横断的に共通するバイオマーカーに基づいた承認としては、2018年に承認を取得した「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)注)」に次いで、今回が2件目の承認取得となります。  注) 条件付き早期承認対象

今回の承認は、化学療法歴のある進行・再発の固形がんに対するキイトルーダ®の有効性および安全性を評価する多施設共同非ランダム化非盲検試験であるKEYNOTE-158試験のデータに基づいています。本試験において、TMB-High を有すると判定された有効性解析対象例102例(日本人6例を含む)の主要評価項目である客観的奏効率(ORR)[RECIST ガイドライン1.1版に基づく中央判定による完全奏効(CR)または部分奏効(PR)]は29.4%(95%信頼区間:20.8~39.3)、CRは3.9%、PRは25.5%でした。安全性については、TMB-High を有すると判定された安全性解析対象例105例中67例(63.8%)(日本人6例中5例を含む)に副作用が認められました。主な副作用(10%以上)は、疲労17例(16.2%)、甲状腺機能低下症13例(12.4%)、無力症13例(12.4%)、食欲減退11例(10.5%)およびそう痒症11例(10.5%)でした。

なお、TMBを測定する遺伝子変異解析プログラムとして、中外製薬株式会社の「FoundationOne® CDx がんゲノムプロファイル」が承認されています。

  

根治切除不能又は転移性の腎細胞癌に対する「レンビマ®」との併用療法の適応拡大について

腎細胞がんは、世界において腎臓における最も発生頻度の高いがんで、腎がんの約9割を占めています*2。日本では2020年に、2万5千人以上が新たに腎がんと診断され、8千人以上が亡くなったとされています*3。腎細胞がん患者さんの約30%は、診断時に転移が確認されます*4。生存率は診断時のステージによって大きく変わりますが、転移性腎細胞がんの5年生存率は14%であり、予後の悪い疾患です*5

今回の承認は、進行性腎細胞がんの一次治療における、1,069人の患者さんが参加された多施設共同、非盲検、無作為化の臨床第Ⅲ相CLEAR試験(307試験/KEYNOTE-581試験)のデータに基づいています。主要評価項目は、RECIST v1.1(固形がんに対する腫瘍径の変化を効果判定に用いる評価基準)に基づく、盲検下独立中央画像判定による無増悪生存期間(PFS)でした。本試験において、本併用療法(n=355)は、対照薬のスニチニブ(n=357)と比較してPFSを統計学的に有意に延長し、増悪または死亡リスクを61%減少させました(ハザード比(Hazard Ratio: HR)=0.39 [95% 信頼区間(Confidence Interval: CI), 0.32-0.49]; p<0.0001)。本併用療法のPFSの中央値は23.9カ月であり、対照薬のスニチニブは9.2カ月でした。安全性については、安全性解析対象例352例中341例(96.9%)(日本人42例中42例を含む)に副作用が認められました。主な副作用は、下痢192例(54.5%)、高血圧184例(52.3%)、甲状腺機能低下症150例(42.6%)、食欲減退123例(34.9%)、疲労113 例(32.1%)、口内炎113 例(32.1%)、手掌・足底発赤知覚不全症候群99例(28.1%)、蛋白尿97例(27.6%)、悪心94例(26.7%)、発声障害87例(24.7%)、発疹77例(21.9%)、無力症71例(20.2%)等でした。

なお、キイトルーダ®は2019年に、根治切除不能又は転移性の腎細胞癌に対するアキシチニブとの併用療法としても承認を取得しています。

 

キイトルーダ®について

キイトルーダ®は、T細胞に主に発現する受容体であるPD-1と、腫瘍細胞に発現するそのリガンドPD-L1およびPD-L2の相互作用を阻害する抗体です。キイトルーダ®はPD-1に結合し、この受容体とリガンドとの結合を阻害することによって、T細胞に生じたPD-1経路を介する抗腫瘍活性の抑制を解除します。

キイトルーダ®は、2017年2月15日に国内で販売を開始しました。これまでに「悪性黒色腫」「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」「再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫」「がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌」「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)注)」「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」「再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌」「根治切除不能な進行・再発の食道癌」「治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌」「PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」「がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の子宮体癌」の効能又は効果について承認を取得しています。また、前立腺がん、胃がん、肝細胞がんなどを対象とした後期臨床試験が進行中です。

注) 条件付き早期承認対象

キイトルーダ®は、米国を含む93カ国で承認を取得しており、世界では現在、1,700以上の臨床試験において30種類以上のがんについて検討が行われています。

MSDは、重点分野と位置付けるがん領域で患者さんと医療従事者のニーズに応えていけるよう、革新的な医薬品の開発を進め、承認取得に向けて取り組んでいきます。

*1: Vanderwalde, A. et al.: Microsatellite instability status determined by next-generation sequencing and compared with PD-L1 and tumor mutational burden in 11,348 patients. Cancer Med. 7(3): 746-756, 2018

2: James JH et al. Renal cell carcinoma. Nat Rev Dis Primers. 2017 Mar 9; 3: 17009.

3: International Agency for Research on Cancer, World Health Organization. “Japan Fact Sheet.” Cancer Today, 2020.

4: Gray RE et al. Renal Cell Carcinoma: Diagnosis and Management. Am Fam Physician. 2019 Feb 1;99(3):179-184.

5: American Cancer Society, “Cancer Facts & Figures 2022.”

MSDについて

MSD(Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.が米国とカナダ以外の国と地域で事業を行う際に使用している名称)は、130年以上にわたり、人々の生命を救い、人生を健やかにするというミッションのもと、世界で最も治療が困難な病気のために、革新的な医薬品やワクチンの発見、開発、提供に挑みつづけてきました。MSDはまた、多岐にわたる政策やプログラム、パートナーシップを通じて、患者さんの医療へのアクセスを推進する活動に積極的に取り組んでいます。私たちは、今日、がん、HIVやエボラといった感染症、そして新たな動物の疾病など、人類や動物を脅かしている病気の予防や治療のために、研究開発の最前線に立ち続けています。MSDは世界最高の研究開発型バイオ医薬品企業を目指しています。MSDの詳細については、弊社ウェブサイト(www.msd.co.jp)やFacebookTwitterYouTubeをご参照ください。

参考資料
抗悪性腫瘍剤「キイトルーダ®」