「レンビマ®」(レンバチニブ) 日本において「切除不能な胸腺癌」の効能効果の承認を取得

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2021/03/23 00:00 Asia/Tokyo

各位

エーザイ株式会社

MSD株式会社

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の日本法人であるMSD株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:カイル・タトル、以下 MSD)は、本日、エーザイ創製のマルチキナーゼ阻害剤「レンビマ®」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)について、日本において「切除不能な胸腺癌」の効能効果追加の承認を取得したことをお知らせします。本剤は、日本における「切除不能な胸腺癌」に対する初めての承認薬剤となります。

本承認は、国立がん研究センター中央病院を含む国内8施設で実施された非盲検、単群、多施設共同の医師主導治験(臨床第Ⅱ相試験、REMORA試験)の結果に基づくものです。本試験では、少なくとも1レジメン以上のプラチナ製剤による前治療歴のある胸腺がん患者様42人が登録され、「レンビマ」単剤の有効性・安全性が評価されました。
主要評価項目である奏効率(中央判定による評価)は38.1%(90%信頼区間 (CI): 25.6-52.0)であり、信頼区間の下限値が事前に設定した統計的基準である閾値奏効率10%を超えたことから、本試験の主要評価項目が達成されました。主な治療関連有害事象(treatment-related adverse events、上位3つ)は、高血圧(88.1%)、蛋白尿(71.4%)、手掌・足底発赤知覚不全症候群(69.0%)であり、既承認の適応と同様の安全性プロファイルでした。

胸腺がんは、患者数が日本でおよそ140人程度と推定されており、極めて希少な疾患です。切除不能な胸腺がんに対しては、プラチナ製剤を含む一次療法が推奨されていますが、二次療法以降は標準的な治療法が確立されていないことから、アンメット・メディカル・ニーズの高い疾患です。本剤は2020年6月に、日本において「切除不能な胸腺癌」の適応で希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を受けています。

エーザイとMSDは、2018年10月より日本において「レンビマ」の情報提供を通じた協業を実施しています。両社は引き続き協業を強化し、本剤によるがん患者様への貢献を最大化していきます。

以上

参考資料

  1. 「レンビマ」(一般名: レンバチニブメシル酸塩)について

「レンビマ」は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼに対する選択的阻害活性を有する、経口投与可能なエーザイ創製のマルチキナーゼ阻害剤です。

非臨床研究モデルにおいて、「レンビマ」は、がん微小環境における免疫抑制因子として知られている腫瘍関連マクロファージの割合を減少させ、インターフェロンガンマ(IFN-γ)シグナル伝達刺激により活性化細胞傷害性T細胞の割合を増加させることで、抗PD-1モノクローナル抗体併用時は、「レンビマ」および抗PD-1モノクローナル抗体のそれぞれの単剤療法を上回る抗腫瘍活性をもたらします。

現在、本剤は、単剤療法として、甲状腺がんに係る適応で日本、米国、欧州、中国、アジアなど70カ国以上で承認を取得しており(米国では、放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がんに係る適応)、また、切除不能肝細胞がんに係る適応で日本、米国、欧州、中国、アジアなど65カ国以上で承認を取得しています。加えて、血管新生阻害剤治療後の腎細胞がんに対するエベロリムスとの併用療法に係る適応で米国、欧州(「Kisplyx®」の製品名で販売)、アジアなど60カ国以上で承認を取得しています。また、全身療法後に増悪した、根治的手術または放射線療法に不適応な高頻度マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability-high:MSI-H)を有さない、またはミスマッチ修復機構欠損(mismatch repair deficient:dMMR)を有さない進行性子宮内膜がんに対する「キイトルーダ®」(一般名:ペムブロリズマブ)との併用療法に係る適応で米国、オーストラリア、カナダなど10カ国以上で承認を取得しています(本承認は奏効率、奏効期間に基づく迅速承認であり、別途検証試験の実施が求められます)。

  1. REMORA試験(NCCH1508試験)について1

本試験は、非盲検、単群、多施設共同(国立がん研究センター中央病院を含む全国8施設)による医師主導臨床第Ⅱ相試験です。少なくとも1レジメン以上のプラチナ製剤による前治療後に病勢進行と判定された切除不能な胸腺がん患者様42人が登録されました。主要評価項目はRECIST1.1に基づく独立画像判定による奏効率(Objective Response Rate: ORR)、副次評価項目は無増悪生存期間(Progression Free Survival: PFS)、病勢コントロール率(Disease Control Rate: DCR)、全生存期間(Overall Survival: OS)、安全性などが設定されました。「レンビマ」は1日1回24 mgを投与開始用量、28日を1サイクルとし、患者様の状態によって適宜減量され、病勢が進行するまで、または許容できない有害事象が認められるまで投与されました。

有効性解析の結果2、ORRは38.1%(90%信頼区間 (CI): 25.6-52.0)であり、最良総合効果は、部分奏効が38.1%、病勢安定が57.1%、病勢進行が4.8%であり、PFS(中央値)は9.3カ月(95% CI: 7.7-13.9)、DCRは95.2%(95% CI: 83.8-99.4)でした。また、データカットオフ時点(2019年2月22日)において、OSの中央値には到達しませんでした(95% CI: 16.1-NR (not reached))。主な治療関連の有害事象3(30%以上)は高血圧(88.1%)、蛋白尿(71.4%)、手掌・足底発赤知覚不全症候群(69.0%)、甲状腺機能低下症(64.3%)、下痢(57.1%)、血小板数減少(54.8%)、食欲減退(42.9%)、体重減少(40.5%)、発声障害(40.5%)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの増加(33.3%)、倦怠感(33.3%)、口内炎(33.3%)がみられました。

1 Jun Sato, Miyako Satouchi, Shoichi Itoh, Yusuke Okuma, Seiji Niho, Hidenori Mizugaki, Haruyasu Murakami, Yasuhito Fujisaka, Toshiyuki Kozuki, Kenichi Nakamura, Yukari Nagasaka, Mamiko Kawasaki, Tomoaki Yamada, Ryunosuke Machida, Aya Kuchiba, Yuichiro Ohe, Noboru Yamamoto; Lenvatinib in patients with advanced or metastatic thymic carcinoma (REMORA): a multicentre, phase 2 trial. The Lancet Oncology, 2020, Vol.21, No. 6, p843-850

2 添付文書に基づく記載内容です。

3 有害事象データについては、論文情報から追加、更新されています。

  1. エーザイとMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.による戦略的提携について

2018年3月に、エーザイとMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A. (米国とカナダ以外ではMSD)は、 「レンビマ」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)のグローバルな共同開発および共同販促を行う戦略的提携に合意しました。本合意に基づき、両社は、「レンビマ」について、単剤療法およびMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の抗PD-1抗体「キイトルーダ」(一般名:ペムブロリズマブ)との併用療法における共同開発、共同販促を行います。

既に実施している併用試験に加え、両社は新たにLEAP(LEnvatinib And Pembrolizumab)臨床プログラムを開始しました。これにより、「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法は14種類のがん(子宮内膜がん、肝細胞がん、メラノーマ、非小細胞肺がん、腎細胞がん、頭頸部扁平上皮がん、尿路上皮がん、胆道がん、大腸がん、胃がん、膠芽腫、卵巣がん、膵臓がん、トリプルネガティブ乳がん)における20の臨床試験が進行中です。

  1. エーザイについて

エーザイは、患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念としています。エーザイはグローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、hhcの実現に向けて戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患領域において、世界中の約1万人の社員が革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。エーザイはhhcの理念のもと、サイエンス、臨床科学、患者様の視点から、顧みられない熱帯病、持続可能な開発目標(SDGs)を含む世界のアンメット・メディカル・ニーズに対して、革新的なソリューションの提供をめざします。

エーザイ株式会社の詳細情報は、www.eisai.co.jpをご覧ください。Twitterアカウント@Eisai_SDGsでも情報公 開しています。

  1. MSDについて

MSD(Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.が米国とカナダ以外の国と地域で事業を行う際に使用している名称)は、130年にわたり、人々の生命を救い、人生を健やかにするというミッションのもと、世界で最も治療が困難な病気のために、革新的な医薬品やワクチンの発見、開発、提供に挑みつづけてきました。MSDはまた、多岐にわたる政策やプログラム、パートナーシップを通じて、患者さんの医療へのアクセスを推進する活動に積極的に取り組んでいます。私たちは、今日、がん、HIVやエボラといった感染症、そして新たな動物の疾病など、人類や動物を脅かしている病気の予防や治療のために、研究開発の最前線に立ち続けています。MSDは世界最高の研究開発型バイオ医薬品企業を目指しています。MSDの詳細については、ウェブサイト( www.msd.co.jp )や Facebook Twitter YouTube をご参照ください。


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