MSD for Mothers 世界で妊産婦の生命を救い、健康に貢献するために
日本のNGOと共に歩むミャンマーでの妊産婦支援
掲載日:2024年11月29日
医療が発展した今でも、世界には、安全面や衛生面が十分でない環境下で出産を強いられたり、予期しない妊娠によって健康に影響が出たり、命を落としてしまう女性がたくさんいることをご存じでしょうか。
私たちMSDは、健康へのアクセス向上をサポートするため「MSD for Mothers」助成プログラムをグローバル規模で展開しています。これは国連の持続可能な開発目標(SDGs)の一つ「すべての人に健康と福祉を」に対するMSDのコミットメントを推進するものです。このグローバルプログラムに、日本の国際協力NGOである公益財団法人ジョイセフ(JOICFP)が選ばれ、ミャンマーの妊産婦を支援するプロジェクトを2019年から5年近くにわたって支援してきました。
このたび、ジョイセフのミャンマー事業担当の吉留 桂さん、栗林 桃乃さんをお招きし、報告イベントを社内で開催しました。今回の記事では、世界の妊産婦を取り巻く環境や、「MSD for Mothers」について、そしてミャンマーでの支援活動をご紹介します。
世界では約2分に1人の女性が、
妊娠・出産時の合併症で命を落としています
世界保健機関の最新データ*によると、世界では、毎日約800人の女性が、妊娠・出産時の合併症で命を落としています。これは、約2分に1人の女性が亡くなっていることを意味します。その内のほぼ95%は低所得および低中所得国で発生し、ほとんどが予防可能なものです。
妊娠や出産中に命を落とす理由はさまざまです。医療用具の不足、合併症に対処するための十分な医療サービスの提供不足、さらに、受診遅れや医療施設に辿り着くまでの交通手段や費用のハードルも原因となっています。女性が健康サービスの支払いをする経済的余裕がないことも理由とされています。
「MSD for Mothers」は、妊娠前、産前、産後に影響を与えるさまざまな要因に対処する包括的なアプローチにより、世界中の母親、赤ちゃん、家族のためのソリューションを提供してきました。10年以上にわたり、NGOやNPOなど様々な団体を通じて、70を超える国・地域で200以上の活動を支援してきました。
世界中で展開しているMSD for Mothersの活動の様子
ミャンマーにおける妊産婦サポート活動の軌跡
このグローバルプログラムのもと、日本においては、2019年3月から2023年10月にかけて、ジョイセフと連携し「家族計画・妊産婦保健サービス利用促進プロジェクト~社会文化的バリアを超えて~」を展開しました。
国連の報告(2020年)によると「出生数10万人当たりの妊産婦死亡率は、日本では4に対してミャンマーでは179」。このプロジェクトでは、妊産婦死亡率が高いミャンマーの中でも、特に死亡率の高い南西部デルタ地帯にあるエヤワディ地域を対象としました。「雨期には陸路での移動が困難、また季節労働者など貧困世帯が多く、医療施設に行くための交通費が工面できず、出産時に村の伝統的助産師に頼らざるを得ないなど課題が多い地域」だと吉留さんは話します。
予期しない妊娠を減らし、安全に出産できる環境を整え、産後ケアも提供するため、このプロジェクトでは妊産婦ケアや家族計画サービス利用促進を目的に掲げ、主に2つの活動を展開しました。
- 家族計画サービスや妊産婦ケア利用のための啓発:
3,600名を超える「母子保健推進員」と呼ばれる保健ボランティアを養成し、妊産婦の家庭を訪問。産前・出産・産後の保健サービスや家族計画に関する情報を届け、不安や誤解を減らしサービスの利用を促進。
- バウチャー制度モデルの導入:
医療施設までの交通費、出産で入院する際の食事代などの経済的負担を軽減するため、補助金を支給する「バウチャー」制度を導入。住民が資金を集めて運営し、保健省が定める適切なタイミングで産前・産後健診を受け、施設で出産する女性に祝い金として補助金を手渡す仕組み。
報告イベントでお話しされるジョイセフの栗林さんと吉留さん
「実は、母子保健推進員もバウチャー制度も、どちらも日本に昔からある制度を参考にして生まれたんです」と話す吉留さん。こうした制度を一過性のものとして終わらせてしまうのではなく、「コミュニティーの人々が主体となり、プロジェクト終了後も持続的に続くよう仕組みづくりの手助けをすることが重要」だと語ります。
この5年近くの間には、多くの困難や苦労がありました。
「新型コロナウイルス感染症の拡大や2021年にミャンマーで発生した軍事クーデターによる混乱など、想定もしていなかった大きな困難に直面し、何度もプロジェクトの中断や変更が余儀なくされました。」
それでも、現地スタッフと連携しながら、日本やタイ、ミャンマー最大都市であるヤンゴンから遠隔で、母子保健推進員やバウチャー管理チームの活動サポートをなんとか継続し、多くの妊産婦の方々の命を救うための支援につなげることができたと話します。
プロジェクト支援を通じて、
MSDの「パーパス」を再認識
ジョイセフの吉留さんと栗林さんをお招きして開催されたMSD本社でのプロジェクト報告イベントには100名を超える社員が参加し、真剣な表情で耳を傾けていました。日本での「MSD for Mothers」活動を担当する広報部門統括 山下 節子は以下のように述べました。
広報部門統括 山下 節子
プロジェクト報告に耳を傾ける社員たち
「『MSD for Mothers』は、SDGs 3.1で提唱されている”2030年までに世界の妊産婦死亡率を出生10万あたり70未満に減らすことを目指す”という目標に呼応するものです。」
「『MSD for Mothers』に、ジョイセフさんが日本のNGOとして初めて選ばれ、MSDは5年近くにわたって伴走させてもらいました。アジアの一員としてミャンマーの妊産婦さんたちの保健環境改善に貢献できたことは、”人々の生命を救い、生活を改善する”ことをパーパスに掲げるMSDにとっても大変意義深いと考えています。」
今回のイベントは、参加した社員にとってもミャンマーでの妊産婦支援プロジェクトを深く知ると同時に、MSDのパーパスに立ち返るきっかけとなりました。MSDは、革新的な医薬品とワクチンの提供とともに、社会に貢献する活動を通じて人々の命を守り生活を改善する取り組みを継続していきます。
社内報告イベントでは、ミャンマーの民族衣装やプロジェクト写真展示が行われ、
ミャンマー料理もふるまわれました。
* WHO Factsheet, Maternal mortality
(※役職と内容は取材当時のものです)
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