9価HPVワクチン「シルガード®9水性懸濁筋注シリンジ」肛門がんの予防の適応追加と男性への接種対象拡大について承認を取得

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2025/08/25 15:00 JST

報道関係各位

MSD株式会社

MSD株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:プラシャント・ニカム、以下 「MSD」)は、本日、ヒトパピローマウイルス(HPV)の9つの型に対応した「シルガード®9水性懸濁筋注シリンジ(以下「シルガード®9」)」について、以下に関する製造販売承認事項一部変更承認を取得しましたのでお知らせいたします。

  1. ヒトパピローマウイルス6、11、16、18、31、33、45、52及び58型の感染に起因する肛門癌(扁平上皮癌)及びその前駆病変(肛門上皮内腫瘍(AIN)1、2 及び3)並びに男性での尖圭コンジローマの予防の適応追加
  2. 9歳以上の男性への接種対象拡大(9歳以上に3回接種、9歳以上15歳未満は2回接種が可能)

これまで、日本において男性に接種可能なHPVワクチンは、4価HPVワクチン「ガーダシル®水性懸濁筋注シリンジ」のみでしたが、今回の承認により、さらに5つのHPV型を加えた9価HPVワクチン「シルガード®9」が男性にも接種可能となりました。「シルガード®9」に含まれるHPV型は、HPV陽性の肛門がん(扁平上皮がん)では95.9%※1(海外データ)、尖圭コンジローマでは95%※2(国内データ)からいずれかの型が検出されています。今回の承認により、日本における男女の肛門がん、尖圭コンジローマの予防がさらに進むことが期待できます。

HPVは、ごくありふれたウイルスで、子宮頸がんだけでなく、男性がかかるがんや疾患の原因にもなります。HPVは主に性交渉により感染し、海外では性交渉の経験のある男性では91.3%、女性では84.6%が一生に一度は感染するといわれています※3。HPVに感染すること自体はめずらしくなく、男女ともに誰でも感染する可能性があります。

HPVに持続感染すると、男女の肛門がんや女性の子宮頸がんなどに進行することがあります。また、HPVの感染は、性器周辺にイボができる尖圭コンジローマを男女ともに引き起こす可能性もあります。肛門がんや尖圭コンジローマでは推奨されている定期的な検診はなく、HPVワクチン接種が有効な予防方法の一つです。

MSD代表取締役会長執行役員 グローバル研究開発本部長の白沢 博満は今回の承認にあたり、「HPVワクチンは、現在日本では主に子宮頸がん予防のために女性に接種されていますが、HPVは男女ともに深刻ながんや疾患を引き起こし、また、主に性交渉で男性にも女性にも感染が広がっていくため、男女問わずワクチン接種で予防することが重要です。今回、9つの型に対応した9価ワクチン「シルガード®9」が男性にも接種できるようになり、他の先進国と同様に性別を問わない接種環境が整ってきたことを大変嬉しく思います。日本の人々をHPV関連がんおよび疾患から守るために、日本においても男性接種が早急に定期接種化されることを期待しています」と述べています。

世界では、性別を問わないHPVワクチンの接種が進んでいます。2025年7月時点で、140以上の国または地域で公費助成が行われており、そのうち80以上の国または地域では、女性だけでなく男性にも公費助成による定期接種等が導入されています※4。日本においても、男性の定期接種については厚生労働省のワクチン評価に関する小委員会において既に議論が開始されており、MSDとしても男女ともにHPV関連がんおよび疾患の予防が一日も早く広く進むよう、厚生労働省をはじめとする関係者と連携しながら、必要な対応を進めてまいります。MSDは、今後も日本の人々をHPV関連がんおよび疾患から守り、公衆衛生の向上に貢献できるよう全力を尽くしてまいります。

承認の根拠となった臨床試験について

V503-064試験

16~26歳の日本人男性1,059例を対象に、「シルガード®9」の日本人男性における有効性、免疫原性および安全性をプラセボと比較して検討した試験です。有効性については、肛門性器部の6カ月以上の持続感染の予防効果は、主要評価項目(HPV6/11/16/18型)で89.3%、副次評価項目(HPV31/33/45/52/58型)で63.5%であり、プラセボに対する優越性が検証されています。安全性については、接種後5日間の注射部位の有害事象は529例中369例(69.8%)、接種後15日間の全身性の有害事象は529例中107例(20.2%)でした。接種後15日間の重篤な有害事象は、虫垂炎、COVID-19、脳挫傷、慢性扁桃炎、気胸、潰瘍性大腸炎、カンピロバクター胃腸炎が各1例、計7例に認められましたが、いずれの事象も「シルガード®9」との因果関係は否定されました。

V503-066試験

9~15歳の日本人男女314例を対象に実施され、「シルガード®9」の3回接種(9~15歳の日本人男性)および2回接種(9~14歳の日本人男女)における免疫原性および安全性を検討した試験です。免疫原性については、9~15歳男性の3回接種群および9~14歳男性の2回接種群ともに、最終接種後1カ月後のHPV6/11/16/18/31/33/45/52/58型に対する抗体陽転率はいずれも100%でした。安全性については、接種後5日間の注射部位の有害事象は、9~15歳男性の3回接種群で103例中87例(84.5%)、9~14歳男性の2回接種群で104例中85例(81.7%)、接種後15日間の全身性の有害事象は、9~15歳男性の3回接種群で103例中55例(53.4%)、9~14歳男性の2回接種群で104例中41例(39.4%)でした。接種後15日間の重篤な有害事象は、9~14歳男性の2回接種群では鼓膜穿孔、食物依存性運動誘発アナフィラキシー反応が各1例、計2例に認められましたが、いずれの事象も「シルガード®9」との因果関係は否定されました。9~15歳男性の3回接種群では接種後15日間の重篤な有害事象は認められませんでした。

肛門がんについて

肛門がんは、日本で年間約1,200人が新たに罹患しています※5。肛門がんには、扁平上皮がんや腺がんなどいくつかの組織型がありますが、海外データでは扁平上皮がんの約90%にHPVの感染が関与しているとされており、子宮頸がんと同様、HPVの持続感染、前駆病変の状態を経て発症するがんです※1。症状は排便時の違和感、肛門の腫れ、痛み、血便ですが、約2割は無症状といわれています※6。外科的切除後の5年生存率は42%で※7、症状が痔と類似するため、受診が遅れることが多いとされています※8。実際に、海外データでは診断時に約29%が転移を伴っているとされています※9。治療は肛門の温存を目指す化学放射線療法が行われますが、外科的切除を行う場合は、生涯にわたって人工肛門が必要になることがあります。現時点では、推奨されている定期的な検診はなく、HPVワクチン接種が有効な予防方法の一つです。

尖圭コンジローマについて

尖圭コンジローマは、日本では年間約7万7,600人が罹患すると推定されており、そのうち男性は4万5,500人、女性は3万2,100人の患者数と推定されています※10。国内データでは、尖圭コンジローマ患者の約95%にHPV感染が関与しているとされています。症状として、乳頭状やカリフラワー状の疣贅(ゆうぜい/いぼ)が特徴で、自覚症状は少ないものの、大きさや発生部位などにより、痛みやかゆみがあらわれることがあります。海外データでは、患者さんからパートナーへの感染率は75%以上で※11、44%が少なくとも1回再発し、22%が2回再発すると言われています※12。コンドームでの完全な予防は難しく、罹患した場合は身体的な痛みや不快感に加え、再発や他者への感染など心理的な不安も男女ともに問題となります※13。治療には外用薬や凍結療法、外科的療法、インターフェロンの局所注射が行われます。現時点では、検診などの早期発見のためのスクリーニング方法が確立されておらず、HPVワクチン接種が有効な予防方法の一つです。

「シルガード®9」について

「シルガード®9」は、9つのHPV型(6、11、16、18、31、33、45、52、58型)に対応した9価HPVワクチンです。「シルガード®9」に含まれるHPV型は、HPV陽性の肛門がん(扁平上皮がん)では95.9%※1(海外データ)、子宮頸がんでは88.2%※14(国内データ)、尖圭コンジローマでは95%※2(国内データ)からいずれかの型が検出されています。9価HPVワクチンは、2014年12月に世界で初めて米国で承認され、日本では9歳以上の女性を対象に子宮頸がんなどの予防を「効能又は効果」として、合計3回接種する「用法及び用量」で、2020年7月21日に製造販売承認を取得しました。また、9歳以上15歳未満の女性に対する代替用法である2回接種の「用法及び用量」の承認は、2023年3月8日に取得しました。

※1 Serrano B et al. Eur J Cancer. 2015; 51(13): 1732-1741.
※2 厚生労働科学研究費補助金研究「尖圭コンジローマにおけるHPV-DNA検出による実態把握」小野寺昭一2011
※3 Chesson HW et al. Sex Transm Dis. 2014; 41: 660-664.
※4 WHO: HPV Dashboard https://www.who.int/teams/immunization-vaccines-and-biologicals/diseases/human-papillomavirus-vaccines-(HPV)/hpv-clearing-house/hpv-dashboard (Accessed Jun. 10, 2025)
※5 厚生労働省健康・生活衛生局がん・疾病対策課「全国がん登録 罹患数・率 報告」(2021年)
※6 国立がん研究センター希少がんセンター:肛門がん(こうもんがん)/ 肛門管扁平上皮がん(こうもんかんへんぺいじょうひがん)
https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/about/Anal_cancer/index.html(Accessed Jun. 10, 2025)
※7 林賢ほか. 日本消化器外科学会雑誌. 1989; 22(10): 2414-2420.
※8 豊永敬之ほか. 日本大腸肛門病会誌. 2024; 77(6): 334-347.
※9 Benson AB et al. J Natl Compr Canc Netw. 2023; 21(6): 653-677.
※10 Kawado M et al. BMC Infect Dis. 2020; 20: 77.
※11 Berek JS, ed. Berek & Novak’s Gynecology. 16th ed. Philadelphia, Pa: Lippincott Williams & Wilkins; 2019: 369-380.
※12 Giuliano AR et al. J Infect Dis. 2019; 219: 703‒710.
※13 Maw RD et al. Int J STD AIDS. 1998; 9: 571–578.
※14 Sakamoto J et al. Papillomavirus Res. 2018; 6: 46-51

以上


MSDについて

MSD(Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAが米国とカナダ以外の国と地域で事業を行う際に使用している名称)は、「最先端のサイエンスを駆使して、世界中の人々の生命を救い、生活を改善する」というパーパスのもとに結束し、130年以上にわたり、重要な医薬品やワクチンの開発を通して人類に希望をもたらしてきました。私たちは、世界トップクラスの研究開発型バイオ医薬品企業を目指し、人類や動物の疾患予防や治療に寄与する革新的なヘルスケア・ソリューションを提供するために、研究開発の最前線で活動しています。また、私たちは、多様かつ包括的な職場環境を醸成し、世界中の人々と地域社会に、安全で持続可能かつ健康な未来をもたらすため、責任ある経営を日々行っています。MSDの詳細については、弊社ウェブサイト(www.msd.co.jp)やFacebookInstagramYouTubeをご参照ください。

<参考資料>

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