HPVワクチン男性接種の定期接種化に関するステートメント
2026/07/28 15:00 JST
報道関係各位
MSD株式会社
2026年7月22日に開催された「第35回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会」(以下、「小委員会」)において、HPVワクチンの男性接種の定期接種化について議論が行われましたが、結論には至らず、審議は継続となりました。
MSDとしては、既に約4年にわたって小委員会で議論されているにもかかわらず、男性の定期接種化がさらに先延ばしとなったことは、日本の公衆衛生上、深刻な問題であると考えています。HPVは男性にも深刻ながんや疾患を引き起こすにも関わらず、男性からその実質的な予防の機会を奪い続けている現状は憂慮されるべきです。女性も含めた社会全体をHPV感染から守るという公衆衛生上の観点は重要なものです。昨今、日本政府が掲げた「攻めの予防医療」では重点領域として「がん」が掲げられましたが*1、これに沿った政策決定が望まれます。男女問わず日本の人々を様々なHPV関連がん・疾患から守るためには、一刻も早い男性接種の定期接種化が必要であると考えます。
同小委員会では、厚生労働科学研究による費用対効果の分析結果が示され、その研究に用いられた分析モデルや前提条件では、9価HPVワクチンの男性への2回接種における費用対効果には課題があるとされました。この分析では、男性が接種することによる女性への間接効果という観点が評価されていません。HPVは主に性交渉で感染します*2。男性へのHPVワクチン接種は、HPVの感染伝播を抑制し、女性の子宮頸がん予防にもつながることが期待されています*3。こうした間接効果は、ワクチンの役割を評価するうえで欠かせない視点であるにも関わらず、同小委員会では間接効果の分析結果が示されていません。男性接種の定期接種化が先延ばしになることは、男性自身のHPV関連がん・疾患の予防が遅れるだけでなく、女性の子宮頸がん予防も遅滞することになります。
また、同小委員会の議論において、ワクチンの効果の持続期間も海外で分析に使用されている期間よりも短く設定されており、将来発生する予防効果を低く見積もっている可能性があるとの説明がありました。同小委員会では、今年度中を目途に、間接効果の分析手法としてグローバルスタンダードとなっているダイナミック・トランスミッション・モデルを構築し、男女間での間接効果を分析することが示されたことは、大変意義のある一歩だと考えていますが、議論が長期化しており、速やかに男性の定期接種化を実現することが必要です。
同小委員会では、複数の委員の方から、費用対効果だけで判断することなく、男女公平性の観点や社会全体での集団免疫の向上などの観点も総合的に勘案して、男性の定期接種化を検討すべきという意見が出されました。実際にイギリス、フランス、韓国など他国では、費用対効果だけでなく、男女両方にがん予防の機会を提供する公平性の観点や、女性への間接効果なども総合的に考慮して、男性への定期接種が判断されています*4-5。G7加盟国のなかで男性接種の定期接種を導入していないのは日本だけで*6、アジアを見ても、台湾は2025年から*7、韓国は2026年から男性接種の定期接種を開始しています*8。現在、男女を対象に定期接種を行っている国・地域は85以上にのぼり、その数は女性だけを対象としている国・地域の数を上回っています*6。日本はもはや、先進国だけでなく発展途上国からも大きな後れをとっています。男女両方においてHPVワクチンの接種率が高いオーストラリアでは、子宮頸がんは、2028年には排除(10万人当たりの罹患者が4人未満)されると推計されています*9。
HPVワクチンの男性接種の定期接種化を要望する声は、様々な関連学会や患者団体などから上がってきています。例えば、予防接種推進専門協議会は20以上の加盟学会に加えて複数の非加盟の学会も名を連ねて、2024年3月には計27学会から、2025年10月には計32学会から2回にわたり厚生労働省に要望書が提出されています*10-11。また、2026年7月には自民党のHPVワクチン推進議員連盟が、2027年4月を目途に男性への定期接種化を実現するよう厚生労働省に要望するとともに、学生の有志も定期接種化を求める署名19,000筆を厚生労働省に提出しました*12。東京都をはじめ、独自に男性接種に公費助成を行う自治体も90以上と増えてきており*13、独自助成を行っていない自治体との格差も生じ始めています。
MSDの代表取締役社長のプラシャント・ニカムは、「世界では、既に男女ともに10代前半でHPVワクチンを接種することがスタンダードになっています。日本は約9年間、女性に対するHPVワクチン接種の積極的勧奨が差し控えられていた経緯があり、女性の接種率も十分に高い状況とは言えません。男性への接種は、男性自身のHPV関連がん・疾患の予防だけでなく、間接効果として女性の子宮頸がん予防にもつながり、社会全体でHPV関連がん・疾患予防を推進することができます。つまり、男性接種の定期接種化が遅れるたびに、日本全体としても人々をHPV関連がん・疾患から守る機会が失われていっているのです。MSDが2025年に査読付き論文Journal of Medical Economicsで発表した費用効果分析では、女性のみにHPVワクチンを接種したときと比較して、男女ともに接種した場合の増分費用効果比(ICER)は費用対効果が良いとされる閾値500万円/QALY以下となり、費用対効果に優れるという結果が出ています*14。最近、イングランドでは、HPVワクチン接種率の高い若年女性の世代で子宮頸がんによる死亡は確認されなかったという結果が報告されましたが*15、こうしたニュースを聞くたびに、日本の現状とのあまりにも大きな違いを思い知らされ、悔やまれてなりません。一刻も早く、日本の男性も女性と同様に公費による接種機会が公平に提供されるべきです」と述べています。
MSDは、日本の公衆衛生の観点から男性接種の早急な定期接種化を強く要望していくとともに、一人でも多くの方がHPV関連がん・疾患から守られるよう引き続き努力してまいります。
*1 厚生労働省「「U.E.N.O.Plan~攻めの予防医療厚生労働省関係施策~ : Understand, Exercise, Nourish and Optimize for Better Health」を公表します」https://www.mhlw.go.jp/stf/index_00154.html (Accessed July 24, 2026)
*2 Winer RL et al. Am J Epidemiol. 2003; 157: 218–226.
*3 Wentzensen N et al. Lancet Public Health. 2026; 11: e4-e5.
*4 第30回厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会 資料2 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001569904.pdf (Accessed July 24, 2026)
*5 Korea Disease Control and Prevention Agency “Afternoon Release on April 16th – Male students now also eligible for free vaccination: Free HPV vaccination for 12 year old boys to begin in May” https://www.kdca.go.kr/kdca/2848/subview.do?enc=Zm5jdDF8QEB8JTJGYmJzJTJGa2RjYSUyRjQyJTJGMzEwNzYyJTJGYXJ0Y2xWaWV3LmRvJTNGcGFzc3dvcmQlM0QlMjZyZ3NCZ25kZVN0ciUzRCUyNmZpbmRPcG53cmQlM0QlMjZmaW5kV29yZCUzRCVFQyU5QyVBMCUyNnJnc0VuZGRlU3RyJTNEJTI2ZmluZFR5cGUlM0RzaiUyNmZpbmRDbFNlcSUzRCUyNnBhZ2UlM0QxJTI2 (Accessed July 24, 2026)
*6 WHO HPV Dashboard https://www.who.int/teams/immunization-vaccines-and-biologicals/diseases/human-papillomavirus-vaccines-(HPV)/hpv-clearing-house/hpv-dashboard (Accessed July 24, 2026)
*7 Taiwan National Council for Sustainable Development “East Asian first: Junior-high boys get access to free HPV vaccinations” https://ncsd.ndc.gov.tw/Fore/nsdn/archives/news/detail?id=617643c0-c22a-46ae-a5df-794defb299f8 (Accessed July 24, 2026)
*8 Korea Disease Control and Prevention Agency ““Free HPV Vaccination Now Available for Boys” HPV National Immunization Program Expanded to Include 12-Year-Old Boys Starting May” https://kdca.go.kr/eng/4289/subview.do;jsessionid=QFecRT-ZGgXQV4_6rtjmGPAkRVYRyKj5zIULozXO.kdca_10?enc=Zm5jdDF8QEB8JTJGYmJzJTJGZW5nJTJGMTg5JTJGMzEwOTI0JTJGYXJ0Y2xWaWV3LmRvJTNG (Accessed July 24, 2026)
*9 Hall MT et al. Lancet Public Health. 2018; 4: e19-e27.
*10 予防接種推進専門協議会 2024年3月8日「HPVワクチンの男性に対する定期接種化に関する要望」https://vaccine-kyogikai.umin.jp/pdf/20240308_Request_to_make_HPV-vaccine_a_routine-vaccination_for_men.pdf (Accessed July 24, 2026)
*11 予防接種推進専門協議会 2025年10月1日「HPVワクチンの男性に対する定期接種化に関する要望」https://vaccine-kyogikai.umin.jp/pdf/251001_Request_for_the_HPV_Vaccine_routine_Vaccination_for_Men.pdf (Accessed July 24, 2026)
*12 署名活動についてのお知らせ · 厚生労働大臣に署名の提出を行いました! · Change.org https://www.change.org/p/%E5%8E%9A%E7%94%9F%E5%8A%B4%E5%83%8D%E7%9C%81-hpv%E3%83%AF%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%B3%E7%94%B7%E6%80%A7%E3%81%AB%E3%82%82%E7%84%A1%E6%96%99%E6%8E%A5%E7%A8%AE%E3%82%92/u/34935720 (Accessed July 24, 2026)
*13 各自治体ホームページなど公開情報を基に集計
*14 Palmer C et al. J Med Econ. 2025; 28: 974–985.
*15 Sasieni P et al. Lancet. 2026; 408: 162-168
以上
MSDについて
MSD(Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA.が米国とカナダ以外の国と地域で事業を行う際に使用している名称)は、「最先端のサイエンスを駆使して、世界中の人々の生命を救い、生活を改善する」というパーパスのもとに結束し、130年以上にわたり、重要な医薬品やワクチンの開発を通して人類に希望をもたらしてきました。私たちは、世界トップクラスの研究開発型バイオ医薬品企業を目指し、人類や動物の疾患予防や治療に寄与する革新的なヘルスケア・ソリューションを提供するために、研究開発の最前線で活動しています。また、私たちは、多様かつ包括的な職場環境を醸成し、世界中の人々と地域社会に安全で持続可能かつ健康な未来をもたらすため、責任ある経営を日々行っています。MSDの詳細については、弊社ウェブサイト(www.msd.co.jp)やFacebook、Instagram、YouTubeをご参照ください。