2014年

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2014年10月21日

報道関係各位

MSD株式会社

メディアセミナー開催報告
日本の公衆衛生における予防接種の役割


MSD株式会社は、2014年8月29日、日本の公衆衛生における予防接種の役割とその重要性 への理解を深めるため、メディアセミナーを開催いたしました。

【開催日時】 2014年8月29日(金)14:30~15:50
【会場】 丸ビルコンファレンススクエア Room4 (8F)
【プログラム】
1. 挨拶
MSD株式会社 代表取締 役社長  トニー・アルバレズ

2. 「予防接種の重要性 公衆衛生学 的視点から」
東京大学大学院医学系研究科 国際保健学専攻 国際保健政策学教室  教授  渋谷 健司先生

3. 「子宮頸がん 実態と予防の重要 性」
独立行政法人地域医療機能推進機構 相模野病院 婦人科腫瘍センター長  上 坊 敏子先生

4. 質疑応答

1. 挨拶  MSD株式会社 代表取締役社長  トニー・アルバレズ 

■ HPVワクチンの現状

日本においてHPVワクチンは、2013年6月の厚生労働省の勧告により、接種の積極勧奨の 差し控えが続いています。HPVワクチン接種後に報告された重い症状について、ワクチンと の直接的な因果関係は示されていませんが、多くの方々が不安に思われていることは十分 に理解しており、一日も早い回復をお祈りしております。

一方、海外では、世界保健機関(WHO)や、米疾病対策予防センター(CDC)、欧州医薬 品庁(EMA)などの政府機関が安全性を検証した上で、継続して接種を推奨しています。日 本においても、科学的な結論にもとづく積極勧奨の再開を期待しています。

日本では子宮頸がんは女性特有のがんの中で第2位の罹患率であり、年間約10,000人が 新たに罹患し、約3,000人が死亡しています。厚労省の推計によると、2009年12月~2013年 9月までにHPVワクチンの接種によって13,000~20,000人の子宮頸がんの罹患を回避し、 3,600~5,600人の死亡を回避したとされています。

■公衆衛生の向上への取り組み

今年7月に、13~50歳女性を対象に実施した「子宮頸がんに関する 認知調査」(別紙参照)によると、子宮頸がんが女性の人生に及ぼす具体的な影響に ついての認知は低いことが分かりました。

当社は「革新的な製品とサービスの発見、開発、提供により、人々の生命を救い、生活 を改善する」とのミッションのもと、今後も安全で効果的なHPVワクチンの供給と開発を継 続するとともに、子宮頸がん予防の啓発活動により一層努めてまいります。


2. 「予防接種の重要性  公衆衛生学的視点から」
東京大学大学院医学系 研究科 国際保健学専攻 国際保健政策学教室 教授
渋谷 健司先生

■予防接種は最も重要な公衆衛生的介入

予防接種の重要性公衆衛生学的視点 から

ワクチンは公衆衛生上重要なものであり、命と健康を守り、個人だけでなく社会全体を 守ります。毎年世界で250万人の子供の命が救われています。また、ワクチンの多くは、効 果が迅速であり、2000~2008年で、ワクチンによって世界のはしかによる死亡は約80%減 少しました。ワクチンにより天然痘は根絶され、次に根絶可能なのはポリオ(小児まひ) で、25年間で患者数は99%減少しています。

■ワクチンの安全性の確保のために

予防接種の重要性公衆衛生学的視点 から

100%絶対に有効でリスクの無いワクチンは存在しません。ワクチンの副反応は稀ですが 必ず起こるということを私たちは理解しなければなりません。ワクチンによる有害事象は 、ほとんどは局所の発赤や痛み、発熱など一過性の軽微なものですが、ごく稀に重篤なも のがあり、治験や導入時に予想されなかった事象もあります。

予防接種の重要性公衆衛生学的視点 から

予防接種後の有害事象は、ワクチンとの因果関係の有無に関わらず、予防接種後に起こ った全ての重篤な健康被害を適切にモニターする仕組みが必要と考えます。WHOは予防接種 後の有害事象の分類を定義しており、因果関係の有無に関わらない「有害事象」と、その 中で因果関係がある「副反応」を区別していますが、日本では有害事象と副反応が混同さ れています。

ワクチンに対する抵抗は必ずあります。ワクチンは健康な多くの人に接種するため、効 果は見えにくいのですが、有害事象については注目される傾向にあります。情報不足や誤 解、誤報、意図的なワクチン脅威論などにより、世界各国でワクチンへの抵抗は存在しま す。その結果、ワクチン接種率の低下を招き、予防できるはずの感染が増加し、重篤な場 合は死亡に至ることもあります。日本でもワクチン禍とそれに伴うワクチン政策の混乱が 繰り返され、最近の先天性風疹症候群のように本来予防できる病気の発症を招いてきまし た。

発生頻度が稀なワクチンの副反応の検証は困難です。よって、有害事象を広く取り、因 果関係を調べていくサーベイランスと個別の事象の系統的なレビューが必要だと考えます 。

■わが国のワクチン政策の課題

日本が直面しているワクチン政策の課題として、以下の3点が必要と考えられます。

1. 科学的に評価し決断するガバナンス。独立性、透明性 やオープンな議論を確保できる体制
2. 予防接種後の有害事象の受動的・能動的サーベイラン ス
3. 重篤な副反応への無過失補償・免責制度

日本のワクチン政策は予防接種法改正で前進しましたが、まだ改善の余地があります。 予防接種は最も重要な公衆衛生的介入であり、副反応は稀ですが必ず起こるので、これら の制度の確立が必要です。


3. 「子宮頸がん 実態 と予防の重要性」
独立行政法人地域医療 機能推進機構 相模野病院 婦人科腫瘍センター長
上坊 敏子先生

■子宮頸がんの肉体的・精神的負担と予防の重要性

子宮頸がん実態と予防の重要性

子宮頸がんの罹患数、死亡数はともに増えており、しかも若年化が進んでいることが大 きな特徴です。子宮頸がんは早期に発見できれば患部を切り取るだけの手術で治療ができ ますが、術後は妊娠しにくくなったり、流産や早産のリスクが高まります。また、子宮を 摘出した場合には、妊娠・出産ができなくなるだけでなく、排尿・排便障害、リンパ浮腫 、性交障害、そして転移や再発の恐怖に悩まされる患者さんも多いのです。私の患者さん のなかには、シングルマザーで生活に余裕がなく、受診したときには既に手遅れで、小学 生のお子さんを残して亡くなられた方もいました。また命は助かっても、リンパ浮腫で足 が腫れあがり、スカートがはけなくなった方や、再発のために入退院を繰り返す間に夫婦 関係が破たんし、精神的にも追いつめられてしまった方もいました。子宮頸がんは、出産 年齢の20~30代で罹患率、死亡率が急上昇しており、若い女性にとって予防の意義は大変 大きいと考えます。

■子宮頸がんの予防法

子宮頸がんの予防法には、HPVワクチンの接種と検診があります。どちらも100%有効で はなく、両方で予防することが非常に重要です。先進国では70~85%の高い検診受診率です が、日本は37.7%と低いレベルに留まっていることが大きな問題です。HPVワクチン接種の 積極勧奨は、昨年6月以降差し控えられている状況で、接種率も非常に低くなっています。 一方、海外では主に12~13歳を対象に接種が推奨されており、積極的に接種を進めている オーストラリアでは、HPV感染率の低下や前がん病変の発生率の低下がみられています。

■HPVワクチンの安全性

子宮頸がん実態と予防の重要性

日本と同様に、海外でもワクチン接種後の広範な疼痛や運動障害の症例報告はあります が、発症時期・症状・経過等に統一性がなく、ワクチンの安全性への懸念とは捉えられて いません。WHOは、子宮頸がん予防は公衆衛生上の優先事項であり、HPVワクチンの推奨に 変更を来すような安全性への懸念は確認していないこと、有効性と安全性を比較すると有 効性が勝ること、不十分なエビデンスに基づくワクチンの危険性に関する主張は、安全で 有効なワクチンの使用の中止に繋がるなど有害なものとなり得ると声明を発表しています 。

■子宮頸がん死亡率ゼロを目指して

ワクチン接種と検診によって、子宮頸がんの死亡率をゼロにすることは夢ではないと思 います。ワクチンで予防できるのは子宮頸がんの65%程度、検診も完璧な手段ではありま せんから、ワクチンと検診の両方を組み合わせることで、死亡率ゼロが達成できると思い ます。また、ワクチンによる予防と検診による予防は性格が違うということも知っておく 必要があります。検診では、前がん病変や早期がんのうちに発見して、浸潤がんになる前 に治療することによって命を落とさないようにすることができます。しかし何らかの病的 な状態がなければ、検診で発見することはできません。一方、ワクチンによる予防では、 HPVの感染そのものを防ぎ、病気にならないようにすることができます。

ワクチン先進国と呼ばれる国は子宮頸がん検診にも熱心です。日本がワクチン接種も検 診も足踏みをしていれば、10~20年後、世界中で日本だけ子宮頸がんが減っていない国に なってしまいます。それは、医師にとってもつらいことですし、日本国民にとっても大き な損失だと思います。日本の若い女性にも、ワクチン接種を受ける機会が広く提供される べきだと思います。


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