抗PD-1抗体/抗悪性腫瘍剤「キイトルーダ®」 根治切除不能又は転移性の腎細胞癌および 再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌に対する効能・効果について一部変更承認を取得
December 20, 2019 00:00 Asia/Tokyo
報道関係各位
MSD株式会社
MSD株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:ヤニー・ウェストハイゼン、以下 「MSD」)は、本日、 抗PD-1抗体「キイトルーダ®(一般名:ペムブロリズマブ(遺伝子組換え))」について、以下の国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得しました。
- 根治切除不能又は転移性の腎細胞癌に対するアキシチニブとの併用療法
- 再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌に対する単独療法
- 再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌に対する化学療法との併用療法
腎細胞がんに対する適応拡大について
腎細胞がんは腎がんのうち最も多くみられる種類のがんで、腎がんの約9割を占めています*1。国内の腎がん患者数は年々増加しており、2015年時点の罹患患者数は約25,000人で、年間9,000人以上が亡くなっていると推定されています*2。
*1: NCCN clinical practice guidelines in oncology: kidney cancer, version 2.2019.; National Comprehensive Cancer Network (NCCN); 2019.
*2: 国立がん研究センターがん対策情報センター 全国がん罹患モニタリング集計 2015 年罹患数・率報告(2019年3月)
腎細胞がんへの適応拡大は、化学療法歴のない、根治切除不能または転移性の淡明細胞型腎細胞がん患者861名を対象とした国際共同第3相試験KEYNOTE-426試験の1回目の中間解析データに基づいています。同試験においては、進行性または転移性腎細胞がんの初回治療におけるキイトルーダ®とアキシチニブとの併用療法の有効性および安全性が示されました。有効性については、スニチニブと比較して、主要評価項目である全生存期間(HR=0.53 [95% CI, 0.38-0.74]、p=0.00005)および無増悪生存期間(HR=0.69 [95% CI, 0.56-0.84]、p=0.00012)をそれぞれ有意に延長したことが示されました。さらに、有効性の評価項目の一つである奏効率(ORR)は、キイトルーダ®とアキシチニブとの併用療法で59%(95% CI, 54-64)、スニチニブで36%(95% CI, 31-40)(p<0.0001)でした。安全性については、キイトルーダ®とアキシチニブとの併用療法群で高頻度(20%以上)に認められた有害事象は、下痢(49%)、高血圧(42%)、甲状腺機能低下症(32%)、疲労(30%)、手掌・足底発赤知覚不全症候群(28%)、ALT増加(24%)、発声障害(23%)、AST増加(23%)、食欲減退(22%)および悪心(21%)でした。
頭頸部がんに対する適応拡大について
頭頸部がんは鼻副鼻腔・口腔・咽頭・喉頭・唾液腺など頭頸部領域に発生するさまざまながんの総称です。
頭頸部の扁平細胞は薄い表層を形成している細胞で、頭頸部がんのほとんどはこの扁平細胞から発生する扁平上皮がんです。国内の2015年時点における頭頸部がん(甲状腺を除く口腔・咽頭・喉頭から発生)の罹患患者数は約25,000人で、年間8,000人以上が亡くなっていると推定されています*3。
*3: 国立がん研究センターがん対策情報センター 全国がん罹患モニタリング集計 2015 年罹患数・率報告(2019年3月)
頭頸部がんへの適応拡大は、化学療法歴のない、再発または転移性の頭頸部扁平上皮がん患者882名を対象とした国際共同第3相試験KEYNOTE-048試験における2回目の中間解析の結果に基づいています。同試験においては、再発または転移性頭頸部扁平上皮がんの初回治療としてのキイトルーダ®単独療法およびキイトルーダ®併用療法を、現在の標準治療であるEXTREMEレジメン(セツキシマブ+カルボプラチンまたはシスプラチン+5-FU)と比較しました。有効性については、EXTREMEレジメンと比較して、キイトルーダ®単独療法では試験集団全体に対する全生存期間の非劣性が認められ(HR=0.85 [95% CI, 0.71-1.03]; p=0.00014[非劣性p値])、さらに腫瘍組織のPD-L1発現陽性(CPS*4≧1)患者に対しては、統計的に有意な全生存期間の改善が示されました(HR=0.78 [95% CI, 0.64-0.96]; p=0.0086)。また、キイトルーダ®併用療法においては、試験集団全体における統計的に有意な全生存期間の改善が示されました(HR=0.77 [95% CI, 0.63-0.93]; p=0.0034)。安全性については、キイトルーダ®単独療法群で高頻度(10%以上)に認められた有害事象は、疲労(14%)および甲状腺機能低下症(13%)でした。また、キイトルーダ®とプラチナ製剤(シスプラチンまたはカルボプラチン)および5-FUによる化学療法との併用療法群で高頻度(20%以上)に認められた有害事象は、貧血(49%)、悪心(45%)、好中球減少症(33%)、疲労(30%)、粘膜の炎症(28%)、血小板減少症(28%)、嘔吐(27%)、口内炎(24%)および食欲減退(22%)でした。
*4: CPS(Combined Positive Score) 総腫瘍細胞に対するPD-L1発現細胞(腫瘍細胞、リンパ球およびマクロファージ)の割合
今回の適応拡大により、キイトルーダ®は、再発または遠隔転移を有する頭頸部がんに対して単独療法および化学療法との併用療法の両方で承認された、初めての免疫チェックポイント阻害薬となります。
なお、PD-L1の発現状況を検査するための体外診断薬として、アジレント・テクノロジー株式会社のPD-L1 IHC 22C3 pharmDx「ダコ」が承認されています。
キイトルーダ®について
キイトルーダ®は、T細胞に主に発現する受容体であるPD-1と、腫瘍細胞に発現するそのリガンドであるPD-L1およびPD-L2の相互作用を阻害する抗体です。キイトルーダ®はPD-1に結合し、この受容体とリガンドとの結合を阻害することによって、T細胞に生じたPD-1経路を介する免疫抑制経路の解除により悪性腫瘍の増殖を制御します。
キイトルーダ®は、2017年2月15日に国内で販売を開始しました。これまでに「悪性黒色腫」「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」「再発または難治性の古典的ホジキンリンパ腫」「がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌」「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」の効能・効果について承認を取得しています。また、切除不能進行・再発食道がん、治癒切除不能な進行・再発の胃がんについて製造販売承認事項一部変更承認申請中であり、乳がん、大腸がん、前立腺がん、肝細胞がん、小細胞肺がん、子宮頸がん、進行固形がんなどを対象とした後期臨床試験が進行中です。
キイトルーダ®は、米国を含む93カ国で承認を取得しており、世界では現在、1,050以上の臨床試験において30種類以上のがんについて検討が行われています。
MSDは、重点分野と位置付けるがん領域で患者さんと医療従事者のニーズに応えていけるよう、革新的な医薬品の開発に引き続き取り組んでいきます。
以上
MSDについて
MSDは1世紀以上にわたり、グローバルにおけるバイオ医薬品のリーディングカンパニーとして、人々の生命を救い、人生を健やかにするために、世界で最も治療が困難な病気のための革新的な医薬品やワクチンの発見、開発、提供に挑みつづけてきました。MSDは、Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.が米国とカナダ以外の国と地域で事業を行う際に使用している名称です。世界140カ国以上で事業を展開し、医療用医薬品、ワクチン、バイオ医薬品およびアニマルヘルス製品の提供を通じて革新的なヘルスケア・ソリューションを提供しています。また、さまざまなプログラムやパートナーシップを通じて、医療へのアクセスを推進する活動に積極的に取り組んでいます。MSDは、がん、生活習慣病、新たな動物病、アルツハイマー病、HIVやエボラなどの感染症をはじめ、世界中で人々やコミュニティを脅かしている病気の治療や予防のために、研究開発の最前線に立ち続けています。MSDの詳細については、弊社ウェブサイト( www.msd.co.jp)や
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<参考資料>
抗悪性腫瘍剤「キイトルーダ®」

*今回の変更・追加部分は下線で表示