リムパーザ、BRCA遺伝子変異陽性卵巣がんの 初回治療後の維持療法として適応を拡大

Save Print

June 19, 2019 00:00 Asia/Tokyo

報道関係者各位

アストラゼネカ株式会社

MSD株式会社

アストラゼネカ株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長:ステファン・ヴォックスストラム、以下「アストラゼネカ」)とMSD株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:ヤニー・ウェストハイゼン、以下「MSD」)は、「リムパーザ錠」(一般名:オラパリブ、以下「リムパーザ」)に関して、2019年6月18日付で、アストラゼネカが「BRCA遺伝子変異陽性の卵巣癌における初回化学療法後の維持療法」を適応症とする製造販売承認事項一部変更の承認を取得したことをお知らせいたします。

本承認は、プラチナ製剤ベースの初回化学療法で奏効が維持されているBRCA遺伝子変異陽性の進行卵巣がん(FIGO分類Ⅲ期またはⅣ期)患者さんを対象とした国際共同第Ⅲ相試験(SOLO1試験)の結果に基づいています。本試験で、リムパーザはプラセボに対し、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の統計学的有意かつ臨床的に意義のある延長を示しました(ハザード比:0.30 [95%信頼区間:0.23-0.41] p<0.0001)。またPFS中央値は、リムパーザ群は未到達、プラセボ群は13.8カ月でした。

リムパーザは2018年1月に「白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣癌における維持療法」の承認を取得し、同年7月には「がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」の治療薬として適応を拡大しています。

アストラゼネカ 専務取締役執行役員 研究開発本部長の谷口忠明は次のように述べています。「進行卵巣がんの約7割が初回治療開始後3年以内に再発し、再発した卵巣がんは治癒が困難となるため、化学療法後の効果を維持することは大きなアンメットニーズとして存在していました。この度、リムパーザをBRCA遺伝子変異陽性の卵巣がん患者さんの新たな治療選択肢としてお届けできることを大変嬉しく思います。リムパーザにおいては一連のがんに対して複数の開発プロジェクトが進行中であり、さらに多くの患者さんの治療に貢献できるよう、引き続き研究開発に注力してまいります」。

MSD 副社長執行役員 グローバル研究開発本部長の白沢博満は次のように述べています。「今回の適応拡大により、再発の不安を抱える進行卵巣がんの患者さんに対して、維持療法における新たな治療の選択肢を提供できることを嬉しく思うとともに、卵巣がん治療の最適化において、BRCA遺伝子変異の有無を確認することの重要性への理解が広がることを期待しています。今後も日本の患者さんのより良い治療に貢献するべく、アストラゼネカ社と連携してリムパーザの開発に取り組んでまいります」。

以上

リムパーザについて

リムパーザ (オラパリブ)は、ファーストインクラスのPARP阻害剤であり、BRCA1および/またはBRCA2遺伝子の変異などの相同組換え修復(HRR)の欠損を有する腫瘍細胞において、DNA損傷応答(DDR)を阻害する最初の分子標的治療薬です。リムパーザによるPARP阻害は、DNA一本鎖切断に結合するPARPを捕捉し、DNAの修復を阻止することで、DNA二本鎖切断を起こし、がん細胞を死滅させます。リムパーザはDDR経路に異常をきたした一連のがんの種類において開発が進行中です。

海外では、米国において、「BRCA遺伝子変異陽性の進行卵巣癌における初回化学療法後の維持療法」「プラチナ製剤感受性の再発卵巣癌における維持療法」「少なくとも3レジメンの化学療法による治療歴を有する生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異陽性の進行卵巣癌」「生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の転移性乳癌」の適応症で承認されています。また欧州では、「BRCA遺伝子変異陽性の進行卵巣癌における初回化学療法後の維持療法」「プラチナ製剤感受性の再発卵巣癌」「生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の局所進行または転移性乳癌」の適応症で承認を受けています。

リムパーザの有効性と安全性

本承認は、プラチナ製剤ベースの化学療法で奏効が維持されているBRCA遺伝子変異陽性進行卵巣がんにおけるリムパーザの無作為化試験(SOLO1試験)の結果に基づいています。

PFSの結果概要1、2、3

1 治験医師による評価

2 追跡期間中央値(四分位範囲):リムパーザ40.7カ月(34.9-42.9)、プラセボ41.2カ月(32.2-41.6)

3 解析はイベント発現割合50.6%の時点で実施

安全性

本試験で確認された安全性プロファイルは、過去のリムパーザ単剤療法で報告された内容と一貫していました。リムパーザが投与された患者さんのうち94.2%(245/260例)に副作用が認められましたが、その多くの重症度は軽度または中等度であり、休薬や減量によって管理可能なものでした。主な副作用は、悪心(70.4%)、貧血(36.2%)、疲労(33.1%)、嘔吐(30.4%)、味覚異常(24.6%)等でした。

BRCA遺伝子変異について

BRCA1およびBRCA2は損傷したDNAの修復を担うタンパクを生成する遺伝子であり、細胞内遺伝子の安定性維持に重要な役割を果たします。これら遺伝子のいずれかに変異があるとBRCAタンパクが生成されないまたは正常に機能せず、DNA損傷が適切に修復されず細胞が不安定になる可能性があります。その結果、細胞はがん化につながるさらなる遺伝子変化を起こす可能性が高くなります。

BRCA遺伝子変異検査について

BRCA遺伝子変異状況の確認は、血液検体を用いた米国ミリアド・ジェネティックス社のBRACAnalysis診断システムによって行います。BRACAnalysis診断システムは、リムパーザの「BRCA遺伝子変異陽性の卵巣癌における初回化学療法後の維持療法」の適応判定を補助するコンパニオン診断として、2019年2月28日に適応を拡大し、2019年6月1日に保険償還されました。

アストラゼネカとMSDのがん領域における世界的戦略的提携について

2017年7月、英国アストラゼネカ社とMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.(北米以外ではMSD)は、世界初のPARP阻害剤であるリムパーザおよび現在開発中であるMEK阻害剤セルメチニブの複数のがんの種類における共同開発・商業化に関するがん領域における世界的な戦略的提携を発表しました。両社は共同で、リムパーザおよびセルメチニブを他の可能性のある新薬との併用療法および単剤療法として開発します。また、単独で、各社は各々のPD-L1およびPD-1医薬品との併用療法としてリムパーザおよびセルメチニブを開発します。

本提携に基づき、日本においても、アストラゼネカとMSD株式会社はコ・プロモーション契約を締結し、2018年7月1日より協業を開始しております。詳細については、2018年6月28日配信の ・プロモーション開始に関するニュースリリース をご覧ください。

アストラゼネカにおけるオンコロジー領域について

アストラゼネカはオンコロジー領域において歴史的に深い経験を有しており、急速に拡大しつつある患者さんの人生と当社の将来を変革する可能性のある新薬ポートフォリオを保持しています。2014年から2020年までの期間に発売を予定する少なくとも6つの新薬、および低分子・バイオ医薬品の広範な開発パイプラインを有する当社は、肺がん、卵巣がん、乳がんおよび血液がんに焦点を当てたオンコロジーをアストラゼネカの4つの成長基盤のひとつとして進展させることに注力しています。中核となる成長基盤に加え、当社は、Acerta Pharma社を介した血液学領域への投資に象徴されるような、戦略を加速する革新的な提携および投資についても積極的に追求していきます。

アストラゼネカは、がん免疫治療、腫瘍ドライバー遺伝子と耐性、DDRおよび抗体薬物複合体の4つの科学的基盤を強化し、個別化医療を推し進める併用療法の開発に挑戦し続けることでがん治療のパラダイムを再定義し、将来的にはがんによる死亡をなくすことをビジョンに掲げています。

アストラゼネカについて

アストラゼネカは、サイエンス志向のグローバルなバイオ・医薬品企業であり、主にオンコロジー、循環器・腎・代謝疾患、および呼吸器の3つの重点領域において、医療用医薬品の創薬、開発、製造およびマーケティング・営業活動に従事しています。また、炎症、感染症およびニューロサイエンスの領域においても、他社との提携を通じて積極的に活動しています。当社は、100カ国以上で事業を展開しており、その革新的な医薬品は世界中で多くの患者さんに使用されています。詳細については http://www.astrazeneca.com または、ツイッター@AstraZeneca(英語のみ)をフォローしてご覧ください。

日本においては、主にオンコロジー、循環器・代謝/消化器疾患、呼吸器疾患を重点領域として患者さんの健康と医療の発展への更なる貢献を果たすべく活動しています。当社については http://www.astrazeneca.co.jp をご覧ください。

MSDのがん領域における取り組み

MSDでは、画期的な科学を革新的ながん治療薬に変換して世界中のがん患者さんを助けることに取り組んでいます。オンコロジー事業にとって、がんと闘う人々を助けることは私たちの情熱であり、がん治療薬へアクセスしやすくすることは私たちの責任です。また、がん領域における取り組みの一環として、医薬品業界で一二を争う急成長を遂げている開発プログラムにより、30種類以上のがんに対するがん免疫療法の可能性を模索しています。また、引き続き戦略的買収を通じて、がん免疫療法のポートフォリオを強化し、進行がんの治療を改善する可能性をもつ有望ながん治療薬候補の開発を最優先に進めています。当社のオンコロジー臨床試験について詳しくは、 当社ウェブサイト をご覧ください。

MSDについて

MSDは1世紀以上にわたり、バイオ医薬品のグローバルリーダー企業として人々の生命を救い、人生を健やかにするために、世界で最も治療が困難な病気のための革新的な医薬品やワクチンの発見、開発、提供に挑みつづけてきました。MSDはMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.が各国(米国とカナダ以外)で事業を行う際に使用している名称です。医療用医薬品、ワクチン、バイオ医薬品およびアニマルヘルス製品の提供を通じてお客様と協力し、世界140カ国以上で事業を展開して革新的なヘルスケア・ソリューションを提供しています。また、さまざまなプログラムやパートナーシップを通じて、医療へのアクセスを推進する活動に積極的に取り組んでいます。MSDは今も、がん、生活習慣病、新種の動物病、アルツハイマー病、HIVやエボラなどの感染病をはじめとして、世界中で人々の命やコミュニティを脅かしている病気の治療や予防のために、研究開発の最前線に立ち続けています。MSDの詳細については、弊社ウェブサイト( www.msd.co.jp)や Facebook 、 Twitter 、 YouTubeをご参照ください。

Next