からだの免疫システムを刺激して病気を防ぐ
人間にはウイルスや細菌などの侵入から体を守り病気を防ぐ、「免疫」という能力があります。わたしたちのからだは、ウイルスや細菌などの異物が体内に入ると、からだの免疫システムが動きだし、それを排除しようと攻撃を開始します。一度侵入した異物は記憶され、再び侵入してきたときには速やかに排除する準備ができる。いわば、からだの中に「対策マニュアル」が用意された状態になります。
予防接種に使われるワクチンは、こうした免疫システムを動員し、いざという時のために体勢を整えておくものです。なお、病気を予防できる期間は病気によっても、またワクチンによっても異なります。一回の接種で免疫が一生続くものもあれば、複数回の接種が必要なものもあります。
ワクチンで予防できる病気
さまざまなワクチンが開発されており、病気の感染予防のために用いられています。
| 病名 |
ワクチンの名前 |
標準・対象年齢 |
接種回数 |
| ジフテリア/百日咳/破傷風 |
DPTワクチン |
3カ月-2歳半 |
4回 |
| 結核 |
BCG |
3-6カ月 |
1回 |
| ポリオ(急性灰白髄炎:小児麻痺) |
ポリオワクチン |
3カ月-1歳半 |
2回(経口摂取) |
| はしか(麻疹)/風疹 |
麻疹・風疹混合ワクチンなど |
(第一期)1歳 (第二期)5-6歳 (第三期)12-13歳 (第四期)17-18歳 |
各期に1回 |
| 日本脳炎 |
日本脳炎ワクチン |
3-4歳 |
3回 |
| 肺炎球菌による肺炎など |
23価肺炎球菌ワクチン |
2歳以上のリスクが高い人、および65歳以上 *脾臓摘出患者は健康保険適用 |
1回 ただし、必要性が慎重に考慮され前回接種より5年以上経過し ていれば再接種可能 |
| 小児の肺炎球菌による髄膜炎など |
7価肺炎球菌ワクチン |
2カ月-9歳 |
1-4回 |
| 小児のHib(ヒブ)による髄膜炎など |
ヒブワクチン |
2カ月-5歳 |
1-4回 |
| インフルエンザ |
インフルエンザワクチンなど |
6カ月以上(65歳以上のみ公費接種) |
6カ月-12歳は年2回、13歳以上は年1回 |
| 水ぼうそう |
水痘ワクチン |
1歳以上 |
1回 |
| おたふくかぜ(流行性耳下腺炎) |
おたふくかぜワクチン |
1歳以上 |
1回 |
| B型肝炎 |
B型肝炎ワクチン |
(一般的予防)全年齢(母子感染予防を目 的とする場合)2カ月-5 カ月(健康保険適用) |
3回 |
| 子宮頸がんなど |
HPVワクチン |
10 -45歳 |
3回 |
(参考:国立感染症研究所感染症情報センター 予防接種スケジュール)
ワクチンは子供だけのものではありません
公費で受けられる予防接種の多くは子供を対象にしたものですが、大人の健康を守るためのワクチンもあります。
例えば肺炎は、感染症にかかりやすい疾患をお持ちの方や65歳以上の方では重症化しやすい病気です。風邪やインフルエンザがきっかけでひき起こされることが多いのですが、「肺炎球菌ワクチン」を接種することにより、肺炎球菌の感染を予防し、入院や重症化を防ぐことができます。費用は基本的に自己負担ですが、全国で2割程の自治体では接種費用の補助制度を設けて接種を勧めています。2009年10月からは、1回目の接種から5年程度以上たった高齢者またはリスクの高い方には、再接種も可能になりました。なお、病気のために脾臓を摘出している方については、健康保険が適用されます。
発がんリスク対策の予防接種
一部のがんの中にはウイルス感染が原因となるものもあります。一度細胞内に入ると数十年もの長期にわたって持続的に増殖し続け、発がんのリスクを高めます。ワクチンのなかには、こうしたウイルスの活動を抑え、発がんリスクを減らすものがあります。
【B型肝炎ワクチン】
B型肝炎ワクチンは、B型肝炎の感染を予防するワクチンです。B型肝炎ウイルスは感染しても多くは無症状のため気づきませんが、ウイルス持続感染者(HBVキャリア)のうち10~15%は慢性肝炎を発症し、治療が必要になるとされています。これを放置すると自覚症状がないまま肝硬変や肝がんへと進むことがあります。ちなみに、日本人の肝細胞がん患者さんの15%はB型肝炎ウイルスによって起こったものと考えられています。
(参考:独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」)
【HPVワクチン】
ヒト・パピローマウイルス(HPV)は、子宮頸部のわずかな傷から侵入します。HPVには多くのタイプがあり、発がんリスクの低い型(6、11型など)とリスクの高い型(16、18、52、58型など)に大別されます。こうしたリスクの高いウイルスに感染し、長期にわたって感染が持続すると、子宮頸部の細胞に病変が起こり、がんが発症することがあります。ウイルス感染自体は非常によくみられることで、免疫機能が正常に働いていれば、ウイルスや変異した細胞は自然に取り除かれますが、免疫機能が低下した状態や、さまざまな要因が関連することでがん化が促進されます。現在国内で接種を受けられるHPVワクチンは、このうち原因として最も頻度が高い16型と18型のHPVの感染を予防することで子宮頸がんの発症を減らすワクチンです。