糖尿病の治療

糖尿病の治療


【監修】東京医科大学 内科学第三講座

主任教授 小田原 雅人

糖尿病の治療

糖尿病における治療の目的は、血糖、血圧、血清脂質、体重などをコントロールすることにより、合併症の発症および進行を阻止し、健康な人と変わらない日常生活の質(QOL : quality of life)を維持し、健康な人と変わらない寿命を全うすることです。

治療は、まず食事療法と運動療法を中心に行いますが、良好に血糖値がコントロールできない場合には薬物療法を併用します。また、インスリンが絶対的に不足している1型糖尿病ではインスリン注射による治療が基本となります。

食事療法

糖尿病のタイプ(1型糖尿病や2型糖尿病など)にかかわらず、糖尿病の治療において基本となる治療方法です。糖尿病の食事療法では、食べてはいけない食品があるわけではなく何を食べても構いませんが、適正なエネルギー量を適正な栄養バランスで適正な時間に摂取することが重要になります。また、外食や間食、アルコール摂取時などは1日に摂取するエネルギー量が過剰になりがちですので、注意が必要です。

運動療法

食事療法とともに、糖尿病治療において基本となる治療法です。運動によって、ブドウ糖や脂肪酸の体内での利用が促進されて血糖値を低下させたり、インスリン抵抗性を改善したりすることが知られています。ただし、合併症がある場合や薬剤で治療している場合は運動が制限されることもありますので、運動の種類や強さ、時間、回数などは医師の指導の下、適正に行うことが必要です。

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薬物療法

糖尿病の薬物療法には、経口血糖降下薬とインスリン注射があります。1型糖尿病ではインスリン注射が不可欠ですが、2型糖尿病では食事療法や運動療法を行っても血糖値が高い状態が改善されない場合は、まずは経口血糖降下薬を服用します。それにもかかわらず、血糖値が改善されない場合は、経口血糖降下薬の増量や2剤以上の併用、さらにはインスリン注射の併用や、インスリン注射への切り替えが行われます。

1)経口薬療法

作用機序が異なるさまざまな種類があり、病態や合併症の程度などに合わせて、単剤もしくは併用で服用します。

種類 主な作用 主な副作用
スルホニルウレア(SU)薬 インスリン分泌の促進 低血糖、体重増加
速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬) より速やかなインスリン分泌の促進食後高血糖の改善 低血糖
α-グルコシダーゼ阻害薬 炭水化物の吸収遅延による食後高血糖の改善 腹部膨満感、おならの増加、下痢
ビグアナイド薬 肝臓での糖新生の抑制インスリン抵抗性改善 胃腸障害
チアゾリジン薬 骨格筋・肝臓でのインスリン抵抗性の改善 浮腫(むくみ)、体重増加、心不全、骨折
DPP-4阻害薬 インクレチンの分解抑制によるインスリン分泌の促進、グルカゴン分泌抑制 低血糖、便秘

診断時および初期に行われる検査

  • スルホニルウレア(SU)薬

膵臓からのインスリン分泌を促進し、血糖値を低下させます。1日1回、朝または1日2回、朝夕に服用します。非肥満者でより効果が高くなります。インスリン抵抗性が強い患者さんにはインスリン抵抗性改善作用がある第3世代が望ましい。

  • 速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)

SU薬と同じようにインスリン分泌を促進し血糖値を低下させますが、SU薬に比べて、血中への吸収と血中からの消失が速いため、効果が現れるまでの時間と作用が持続している時間が非常に短いのが特徴で、食後の高血糖を抑える作用があります。1日3回、食事の直前(5~10分以内)に服用します。それより前に服用すると、食事を始める前に低血糖を起こす可能性があります。

  • α-グルコシダーゼ阻害薬

食事から摂取した炭水化物の分解を抑えることにより、小腸からの糖の吸収を遅らせて、食後の高血糖を抑える薬です。1日3回、食事の直前に服用します。

  • ビグアナイド薬

肝臓での糖の新生や消化管からの糖の吸収を抑えるなど、膵臓以外に作用して血糖値を低下させます。体重を増加させにくいため、肥満を伴う2型糖尿病によく使われます。1日2~3回、食後(5~10分以内)に服用します。

  • チアゾリジン薬

肝臓、筋肉でのインスリン抵抗性を改善します。脂肪細胞への作用もあります。肥満者で効果が高く、女性でより効く傾向にあります。アディポネクチンを上昇させます。

  • DPP-4阻害薬

食事をしたときに腸管から分泌される「インクレチン」というホルモンの分解を抑制することにより、血糖値をコントロールする新しい機序の薬剤です。インクレチンは膵臓のβ細胞からのインスリン分泌を促進することとグルカゴンの分泌抑制により血糖値を低下させます。1日1回、服用します。

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2)注射薬療法

1.インスリン療法

インスリンを直接補充することにより血糖値を低下させる、1型糖尿病患者さんには不可欠な治療方法です。新しいインスリン製剤の開発や注射器の改良など、インスリン療法をめぐる環境は急速に改善されています。

従来、糖尿病の末期にのみ行われるとの印象が強かったインスリン療法ですが、食事療法や運動療法、経口血糖降下薬で血糖値のコントロールが不十分な2型糖尿病患者さんや、食事療法のみではコントロールできない妊娠糖尿病の患者さんなどでもその効果が知られるようになり、積極的に行われるようになりました。

インスリン製剤は、注射後に効果が現れるまでの時間や作用が持続する時間によって、大きく5つに分類されています。健康な人の自然なインスリン分泌パターンにできるだけ近づけることを目標に、1種類あるいは複数のインスリン製剤を組み合わせて治療を行います。

2.インスリン以外の注射薬

GLP-1受容体作動薬

2つのインクレチンのうち、GLP-1の働きを補う注射薬です。DPP-4阻害薬と同様に、膵臓のβ細胞からのインスリン分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制して血糖値を低下させる他、食欲を抑える作用もあると言われています。1日1回皮下注射します。

分類 液状 効果発現時間 作用持続時間 その他
超速効型 透明 15分以内 (最大作用時間約2時間) 食直前に注射し、食事による血糖値の上昇を抑える
速効型 透明 30分程度
※皮下注射の場合
約5~8時間(最大効果は約2時間後)
※皮下注射の場合
食前(約30分前)に注射
中間型 白濁 約1~3時間 約18~24時間 懸濁液のため、よく振ってから使用する
混合型 白濁 それぞれの
作用発現時間
中間型インスリンとほぼ同じ 超速効型または速効型インスリンと中間型インスリンをあらかじめ混合したもの
懸濁液のため、よく振ってから使用する
持効型溶解 透明 約1~2時間 ほぼ1日 基礎インスリン分泌を補充し、空腹時血糖値の上昇を抑える

 
 

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