インクレチンとは

インクレチンとは


 
 

【監修】東京医科大学 内科学第三講座

主任教授 小田原 雅人

インクレチンとは?

食事を摂取したとき腸管(主に小腸)から血液中に分泌される消化管ホルモンの一種であり、食後に高くなった血糖値をコントロールするために、膵臓β細胞からのインスリン*分泌を増加させたり、膵臓α細胞からのグルカゴン**分泌を抑制したりします。これらの作用は、血糖値が上昇しているときに発揮され、血糖値が正常値にコントロールされているときには働かないため、血糖依存的な作用であると言われています。しかし、分泌後DPP-4(ジペプチジルペプチダーゼ-4)と呼ばれる分解酵素により速やかに分解されてしまい、生体内での活性を失います。

近年、インクレチンが血糖依存的に血糖値をコントロールする作用(血糖値を下げすぎない作用機序)に注目が集まっており、インクレチンを分解するDPP- 4を阻害する薬剤などが開発され、既存のいずれの血糖降下薬の作用機序とも異なる新しいアプローチで2型糖尿病患者さんにおける高血糖を改善できるのではないかと期待されています。

* インスリン:膵臓のβ細胞から分泌され、血液中の糖の筋肉などへの取り込みを促進し、血糖値を低下させます。

** グルカゴン:膵臓のα細胞から分泌され、肝臓に働いて糖を血液中に放出する作用を促進し、血糖値を上昇させます。

インクレチンの役割は?

血糖値のコントロールに直接かかわるホルモンとしてインスリンとグルカゴンがあります。さらに、これらのホルモンに作用するインクレチンも血糖値のコントロールに間接的にかかわっています。

食後の血糖値が高い状態では、インクレチンが腸管(主に小腸)から分泌され血液中のインクレチンの濃度が上昇し、膵臓のβ細胞を刺激することによってインスリンの分泌が促進され、血糖値が低下します。また、腸管(主に小腸)から分泌されたインクレチンには、膵臓のα細胞にも作用し、グルカゴンの分泌を抑制することによって血糖値を低下させるものもあります。しかし、インクレチンは分解酵素であるDPP-4(ジペプチジルペプチダーゼ-4)によって分解され血中半減期は非常に短いことが知られています。

血糖調節におけるインクレチンの作用

インクレチンの種類とその働き

現在、知られているインクレチンは、GLP-1(グルカゴン様ペプチド1)とGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)の2種類です。

GLP-1は主に小腸の下部から分泌され(図)、膵臓のβ細胞からのインスリンの分泌を促進するとともに、α細胞からのグルカゴンの分泌を抑制します。GLP-1は膵臓以外に胃や中枢神経系にも働きます。胃では腸へ食べ物が送られるのを抑制し、食後の血糖値を低下させます。つまり、食後に高血糖になるのを防ぐのです。さらに、中枢神経系では食欲を抑制することによって体重の増加を抑制します。

一方、GIPは主に小腸の上部から分泌され(図)、GLP-1と同じように膵臓に作用しますが、インスリンの分泌を促進する働きはGLP-1の方が数倍強いとされています。

インクレチンの種類と作用