糖尿病の合併症

糖尿病の合併症


【監修】川崎医科大学 内科学(内分泌・糖尿病)

教授 加来 浩平

糖尿病の合併症

糖尿病の進行に伴い血糖値が高い状態が慢性的に続くと、血管をはじめとする臓器に障害が起こります。まず、末梢神経や、網膜または腎臓の細い血管に障害が起こることにより、糖尿病の三大合併症(細小血管症)と呼ばれる糖尿病神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病腎症を発症します。

また、全身の太い血管の動脈硬化が促進することにより、心筋梗塞、脳梗塞、下肢の閉塞性動脈硬化症などの大血管症を発症することがあります。さらに、糖尿病が重症化すると、意識障害や糖尿病昏睡などのより重い合併症を発症する場合もあります。多くの場合、これらの合併症は自覚症状がないまま進行するため、注意が必要です。

糖尿病神経障害

糖尿病発症から5年ほどで末梢神経に障害が起こり始めます。手や足先のしびれ、冷感、感覚異常などの症状に加え、痛みや熱に対する感覚が鈍くなることにより、手足のやけどや傷、水虫などに気づきにくくなり、重症化して壊疽(えそ)[1]にまで至ることもあります。そのほか、起立性低血圧(立ちくらみ)や発汗異常、胃腸の不調(便秘、下痢など)、膀胱機能障害、勃起障害(ED)などの自律神経障害による症状も現れます。

糖尿病網膜症

目の網膜には毛細血管が網目状にはりめぐらされています。血糖値が高い状態が続くと毛細血管がつまるなどして網膜への酸素や栄養分の供給が不足などにより初期病変が発症します。高度に進行すると、黄斑症を起こしたり、血管新生による眼底出血や硝子体出血を起こします。初期には自覚症状はほとんど現れませんが、進行すると失明に至ることもあります。早期発見および早期治療が重要であり、糖尿病と診断された場合は同時に眼科を受診し、その後も定期的に眼科での検査を継続することが必要です。

糖尿病腎症

腎臓の糸球体は尿の生成にかかわる重要な部位であり毛細血管が密集しています。血糖値が高い状態が10~15年間続くと次第に毛細血管が変性し、血液の濾過(ろか)機能が障害され、糖尿病腎症を発症すると言われています。進行すると腎不全を起こし、透析が必要になることもあります。糖尿病腎症は、わが国における維持透析(血液透析・腹膜透析)導入の原因疾患の第1位であり、患者さんの数は年々増加しています。

大血管症(動脈硬化性疾患)

糖尿病患者さんでは、糖尿病を発症する前から動脈硬化が始まっていると言われています。糖尿病発症後さらに動脈硬化が促進することにより、心筋梗塞、脳梗塞、下肢の閉塞性動脈硬化症などの大血管症を発症します。高血圧や脂質異常症(高脂血症)、肥満、喫煙なども動脈硬化性疾患を発症する危険性を高めるため、糖尿病患者さんでは血糖値のコントロールはもちろん、これらの疾患の治療および生活習慣の改善も重要です。

糖尿病足病変

血糖値が高い状態が続いて下肢の血行や神経に障害が起こると、痛みなどに対する感覚が鈍くなります。足に水虫や小さな傷などがある場合、その傷に気づかずに放置することになり、細菌感染が広がって皮膚潰瘍[2]や壊疽(えそ)が起こります。これらは膝から下に起こることが多く、重症化すると足を切断しなければならないこともあります。日頃から足をよく観察し、家族などにも見てもらい、足を常に清潔に保つことが重要です。

歯周病

歯周病は、歯周病菌が歯周組織に感染して起こる慢性的な感染症です。血糖値が高い状態では歯周病菌の増殖を抑える力が弱くなるため、糖尿病患者さんでは歯周病の重症化がしばしばみられます。歯周病は心筋梗塞などの動脈硬化性疾患や感染性心内膜炎、呼吸器疾患などの誘因にもなるため、注意が必要です。

[1]壊疽: 体の一部が組織崩壊し、腐ること

[2]皮膚潰瘍: 何らかの原因で皮膚に穴があくこと


 
 

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